「読字障害」早い段階での指導を

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ディスレクシアの主な特徴
教育関係者らを集めたセミナーで読字障害の「ディスレクシア」の症例や支援について語る平谷美智夫院長=7月、福井県永平寺町の福井県立大学

 知的発達に遅れはないものの、特定の学習領域に困難がみられる「学習障害」のうち、読み(読字)に関する障害を「ディスレクシア」と呼ぶ。文字を音声に変換する脳の働きに問題があるため、文字を読むことが困難となり、書くことも苦手になる。福井県内の専門医は「ディスレクシアの児童は、読み書き中心の学習につまづき、学校そのものが嫌いになる場合が少なくない。早い段階での療育や長期的見通しを持った指導が重要」と訴える。

 ■国内人口の1~3%

 ディスレクシアは、学習障害で最も頻度が高く、世界の全ての地域で確認されている。日本では人口の1~3%とみられている。

 就学前の子どもでは「文字に興味を示さない」「言葉を逆から言えない」など文字への関心や音韻意識の弱さがみられる。小学生以降は、単語の発音を間違えたり、音読を嫌がったり、読むのがたどたどしかったりする。中学ではほぼ例外なく英語が苦手となり、読み書きの力が反映されやすい高校受験が極めて不利になる。

 注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)が併存する割合が高く、計算障害も併発しやすい。県内外で350例のディスレクシアを診断してきた平谷こども発達クリニック(福井市)の平谷美智夫院長は「小学生は宿題を含め1日の作業の大半が『読み書き+計算』なので、ディスレクシアをはじめ学習障害の子どもにとっては“地獄”のような毎日になりかねない」と指摘。「心理的なつらさを抱え、自己評価の低下や登校渋りにつながることが懸念される」と話す。

 ■合理的な配慮

 2016年に障害者差別解消法が施行され、障害のある子どもの苦手な物事に応じた個々の配慮が求められるようになった背景を踏まえ、同クリニックは7月、ディスレクシアについてのセミナーを開催。全国から約220人の教育関係者や保護者が集まった。

 上智大の原惠子准教授は、話し言葉の音の粒(日本語ではひらがな1文字)に気づく「音韻意識」を育てることの重要性を指摘。県特別支援教育センターの担当者は▽授業や試験でのタブレット端末、テキスト入力機器の使用を許可する▽筆記に代えて口頭試問による学習評価を行う-など、ディスレクシアの子どもへの合理的配慮の具体例を説明。入学試験においても、別室での受験、時間延長、拡大文字、音声読み上げ機能の許可などが県教委の対応要領に定められていることを示した。

 平谷院長は県内の支援例として、ディスレクシアの児童に対し「教科書音読の際は、事前に予告しておく」「作文のワープロ使用を認める」などの配慮を得たことを紹介。また、中学ではペーパー試験の成績は本人の教科への理解を十分に反映していないなどとして、志望校への学校内推薦を要望する診断書を2度にわたり提出、無事に高校進学につなげたことを語った。

 ■学校を“乗り越える”

 ディスレクシアは早期発見、早期療育、生涯にわたる見通しを持った指導が治療の基本となる。ひらがな、カタカナ、漢字、英語といった多彩な文字を扱う日本語文化圏でのディスレクシア研究は今後の課題になっている。

 平谷院長は「読み・書き・計算ドリルの宿題が毎日のように課せられる小学校、学力テストの結果に一喜一憂する中学校さえ乗り越えれば、子どもたちは見違えるほど楽しくなる。将来自立できるかは読み書きの力よりも個性に合った職業選択が重要になる。本人の努力はもちろんだが、学校や家族のサポートする姿勢が大切」と話している。