危うくレースを台なしにするところだったファイナルラップの『謎の白いクルマ』の正体はドクターカー。初優勝のバトンも苦言を呈す

 スーパーGT第6戦SUGOの決勝、レース終盤のセーフティカー導入でギャップが一気になくなったGT500のトップ争い。RAYBRIG NSX-GTとARTA NSX-GTの緊迫したバトルの最中、ファイナルラップで信じられない出来事が起きた。謎のクルマがコース上に入り、初優勝を飾ったRAYBRIGのジェンソン・バトンも苦言を呈すなど、危うくトップ争いに水を差すところだった。

 セーフティカーが解除され、残り6周でレースが再開した決勝終盤。残り4周となった78周目に4コーナーでWAKO’S 4CR LC500の追突を受けるかたちでKeePer TOM’S LC500がオーバーランしてクラッシュ、さらに最終コーナーの進入でEpson Modulo NSX-GTがコースアウトし、クラッシュバリアに直進してストップ。アクシデントが相次いだ。

 コース上にはFRO(ファースト・レスキュー・オペレーション)が出動してEpson、KeePerのもとへ向かったが、そこで、プレスルームからコースを見ていたオートスポーツwebスタッフは驚いた。2コーナーから3コーナーに向けて、見慣れぬ白いステーションワゴンがコース上を走行していたのだ。思わず二度見してしまうほどだった。ルーフ上にランプが点いていることから、オフィシャルカーには間違いない。

3位を争うGT300車両の後方にドクターカーの姿が見える

 その白いワゴンはそのまま3〜4コーナーを進み、S字コーナーで縁石に乗り上げるようにレーシングカーと同じ走行ラインをトレースしていく。ここでテレビ中継にも映ったように、ファイナルラップに入ったRAYBRIGとARTAのバトルを妨害することになってしまった。テレビ中継を見ていたファンの方も驚いたと思うが、プレスルームの我々も目を疑うファイナルラップの光景に唖然となった。

 わずかに2番手のARTA NSX-GTを駆る野尻智紀にギャップを作る走りをみせていたトップのバトンは、驚くようにブレーキを踏んで急減速。その後、無事に白いワゴン車をオーバーテイクすることができたが、ARTAとのギャップは縮まりテール・トゥ・ノーズ状態に。それでもバトンにとっては幸いなことに順位をキープすることができ、スーパーGT初優勝を飾ることができた。

 ただ、もし白いワゴン車の影響でトップが入れ替わるなど順位が変わった場合、そしてレーシングカーとの接触事故などを想像すると、今回の出来事は恐ろしい。世界選手権でもあり、世界最高峰のハコ車バトルとしてのレース運営、管理のクオリティの高さを誇ってきたスーパーGTだけに、今回は世界中に驚くシーンを見せることになってしまった。

 正義感の強いバトンも、スーパーGT初優勝の歓喜の最中に、ファイナルラップの謎の白いワゴン車への提言を忘れなかった。

「最終ラップでは、シケインに白いクルマがいて、何でこんなところにこんなクルマがいるのだろうとビックリした。なぜなのか、全然分からなかった。あと少しのところでレースが台なしになるところだった。なぜあの車両があそこにいたのか理解できない」

「黄旗が出ていたからペースを落としていたけど、それでも驚いた。スーパーGTはセーフティの面も徹底されているシリーズだから、この件についてはしっかりチェックしてもらいたい」

 レース後の取材で、白いワゴン車の正体はスポーツランドSUGOのドクターカーであることが判明。最終コーナー入口に止まったEpson Modulo NSX-GTのドライバー救出のために向かったとのことだが、スーパーGTを主催するGTアソシエイション(GTA)からの指示ではなく、スポーツランドSUGOの判断によるものだったという。

 さらに、コースインした場所も最終コーナー出口の15番ポストから出場したとのことで、最終コーナーの入り口でクラッシュしたEpsonの救出にまるまる1周、走行しなければならないことになる。果たしてこの一連の判断は正しかったのかどうか。

 GTAの坂東正明代表にレース後に聞くと「起こったことは仕方がないし、サーキット側をとがめるようなことはしない。ただ、今後の再発防止に向けて指揮系統、そして連絡経路を改めてきっちりと確認したい」と話すに留めた。

 白いワゴン車の車種はプリウスαのG’z仕様。心ないファンからは、「ホンダのワン・ツーを妨害しようとした陰謀ではないか」と揶揄されるほど、ファイナルラップの緊迫したトップバトルを妨害する考えられないシーンだった。その原因追求と、今後の運営対策は避けられない。

スーパーGT第6戦SUGOの決勝ファイナルラップでトップ争いを妨害してしまったドクターカー

©株式会社サンズ