敬老の日

 祝日法によると「多年にわたり社会に尽くしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う日」-。きょうの「敬老の日」が祝日になったのは1966年。きっかけをつくったのは兵庫県中部の旧野間谷村▲「老人を大切にし、年長者の知恵を借りて村づくりをしよう」と村長さんの発案で、戦後間もない47年9月15日に「としより会」を開いたのが全国に広がり、祝日制定につながった。市町村合併で村の名前は消えてしまったが「敬老の日提唱の地」の石碑が今も誇らしげに立っているとか▲47年は、日本人の平均寿命が初めて男女とも50歳を超えた年でもあった。としより会の参加資格も「55歳以上」だったと聞けば、月並みだがやはり隔世の感▲時は流れて…政府は希望する高齢者が70歳まで働けるよう、雇用義務付け年齢の見直しに向けた検討を始めたとされる。安倍晋三首相も自民党総裁選の討論会で「人生100年時代に備え、3年間で社会保障制度改革を」と高らかに▲いつまでも元気で、現役で。だが、あつらえたスローガンのような響きの向こうに、労働力不足の解消や年金制度の不安が分かりやすく見え隠れする▲人生が長くなった代わりに、年長者をいたわり、ねぎらい、温かく見守る自然な“敬老精神”の行方はどこか心配-そんなこの国の今である。(智)

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