余命宣告受けた男性 今年4月飲酒、逆走し事故 鹿児島-福島1100キロ 「最期のあいさつ」直後に

「もう運転はしない」

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北茨城市内の常磐自動車道で今年4月、鹿児島市内の無職男性(70)の乗用車が上り線を逆走し、トラックと正面衝突した。男性は道交法違反(酒気帯び運転)容疑で逮捕、起訴され、8月に執行猶予付きの有罪判決を言い渡された。福島県いわき市内の義弟に会うため、自宅がある鹿児島市から1100キロ以上を走破した後、帰路に就いた直後に事故を起こした。男性はがんを患い医師から余命半年と告げられた。数少ない親族に「最期のあいさつ」に行った直後だった。

4月24日午後11時20分ごろ、北茨城市関本町関本上の常磐道上り線で、男性の乗用車が追い越し車線を逆走し、対向してきた東京都練馬区、男性(58)のトラックと正面衝突した。幸い2人ともけがはなかったが、県警の飲酒検知で逆走した男性から基準値を超えるアルコールが検出された。

道交法違反の罪などで起訴された男性の公判が8月、水戸地裁であった。車いすで法廷に現れた男性は起訴内容を認めた。公判の中で「20歳の頃から運転していた」と、運転に慣れていたことを強調した。

自宅から義弟がいる、いわき市まで直線で1100キロ以上。長距離を車で走破する理由があった。「医師から余命半年と伝えられ、義弟に最期のあいさつがしたかった」

男性は途中、給油のため愛知県内のガソリンスタンドに立ち寄った。その際、店員から車検と自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が切れていることを告げられたが、運転を続けた。

「最期のあいさつ」の日、義弟と缶ビールなど酒を飲み交わした。その後、自宅に向けハンドルを握った。義弟から止められたにもかかわらず、午後10時半ごろ、鹿児島に出発。「4時間くらい寝たので、大丈夫だと思った」。約1時間後、事故を起こす。どこから上り線に入り逆走したのか。状況は「全く覚えていない」。

同地裁は8月17日、懲役7月、執行猶予3年(求刑懲役7月)の判決を言い渡した。最後に裁判官が諭した。「今回の事故と病気のことは関係ない。今後は運転しないと約束できますね」。男性は「迷惑を掛けた。もう運転はしない」と力なく答えた。(吉原宗康)