金属行人(9月18日付)

 LME(ロンドン金属取引所)ニッケル価格が今年最安値圏で推移している。先週後半にはやや値を戻したが、米中貿易摩擦のさらなる悪化を懸念する見方から投機資金が流出し、6月の最高値から20%安の水準まで下落している▼一方で関係者からは「非鉄金属の足元の実需は総じて弱くない」との声が多く聞こえる。ニッケルも需給指標となるLME在庫の減少傾向が継続しており、足元は年初比で36%減の水準だ。「リチウムイオン電池向けの需要が着実に増加している」との見方が強い▼ニッケルは純ニッケルが「クラス1」、フェロニッケルや含ニッケル銑鉄(NPI)が「クラス2」と分類される。電池材料にはクラス1のニッケルだけが原料として使えるが、クラス1はここ数年の価格低迷で新規開発プロジェクトが停滞し、供給能力がそれほど増えていないのが実情だ▼今年のニッケル需給バランスは10万トン程度の供給不足になるとみられているが、米中貿易摩擦が長期化し、ニッケル価格の低迷が続けば既存工場の減産や新規開発案件の停滞につながりかねない。車載用二次電池に不可欠なニッケルの供給に支障が出ないよう、実需を反映した価格に近づいてもらいたいものだ。

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