【普線製品市況】今秋以降浮揚も 母材のタイト感顕在化

 普通鉄線やナマシ鉄線、針金など普通線材製品は秋需がいまだ盛り上がっておらず、足元では品薄感に乏しい状況が続いている。しかし母材となる普通線材はタイト化が顕在化しており、製品市場に需給の引き締まりが徐々に浸透するとみられる。今秋以降、製品市況に浮揚感が広がりそうだ。

 普通線材はひっ迫している特殊鋼棒線の鉄源確保を受けて、鉄鋼各社による増産余力が乏しい状況が続いている。輸入線材も1~7月累計輸入は昨年よりも8・5%下回っており、海外からの調達も難しくなっている。

 一方、普線製品の需要環境をめぐっては、主な需要先である公共関連がここ近年、大幅な増減はなく例年並みの水準で推移している。年度末で需要期を終えた今春ごろに至っては、コンクリート二次製品など中間在庫や半製品の在庫が積み上がっており、荷余り感が指摘されていた。

 鉄鋼メーカー筋によると「各需要分野の市場動向をみて、普通線材にいまだ調整する余裕があるのであれば、鉄源確保のためにもう一段階の調整の可能性は大いにあり得る」との意向を示している。このため伸線メーカーや流通業者らは普線供給のタイト化への警戒感を高めている。

 一方、普線製品の最終需要家やコンクリート業者らは品薄感に乏しいため、川上と川下の両者では需給の認識に温度差が広がっている。

 流通筋によると、「夏場は閑散シーズンであるが、今年は東京五輪関連などの需要があり、前年より荷動きがあった」様子だ。中間在庫の消化は徐々に進んでいるとみられ、公共関連の秋需が本格的に出現してくれば、製品市場は一斉にタイト感が醸成するとみられる。製品市況に上伸気配が高まりそうだ。

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