金属行人(9月19日付)

 ブラジルの都市では昼時によく車が混み合う。ランチタイムなのはもとより、学校の送り迎えがあるからだ。公立校の教員が足りず生徒が午前と午後の二部制で入れ替わる時間にも重なるためという▼ルラ氏、ルセフ氏といった左派の労働者党が長く大統領職を握ってきたブラジルでは、低所得者層の底上げを重視する政策が採られてきた。ただ教育予算への投資より有権者へ直接配分する「ばらまき」色が強く、経済界は冷ややかな見方を強めてきた▼あまり日本では伝えられていないが、今のテメル大統領は議会で強い勢力を持つブラジル民主運動党の出身で、議会の協力を得て「ばらまき」政策の見直しを進めた面もあるそうだ。ただ国民には不評で、支持率は一桁台が続く。10月に行われる大統領選での再選は絶望的とされるが、身を捨てて思い切った手を打つと評価する見方もある▼そのテメル氏でも実現できなかった案の一つが大統領選を間接選挙へ変更すること。人気取りやインパクト勝負で国のトップを選ぶ危うさは他の国でも感じられるところだ。我が国は間接選挙。自由民主党総裁選も終盤を迎えている。結果はどうあれ、間接選挙の良さを示すことができるだろうか。

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