データを駆使した野球の見方を楽しむイベント 元選手とアナリストが対論

9月15日にデータを駆使した野球の見方を楽しむイベントが開催された【写真:(C)PLM】

セイバーメトリクスのデータ指標を紹介し生の試合で体験

 選手を新たな指標で表したセイバーメトリクス、投手の投げたボールの回転数や打者の打球速度・角度を測定するトラックマンシステム……。2000年代以降、MLB発祥のデータが日本プロ野球でも普及していき、現在ではデータはプレーする側も見る側も欠かせないものになっている。

 そんな野球におけるデータ活用を促進するイベント「パ・リーグ×パーソル ベースボール データハッカソン」が10月6、7日と渋谷で開催される。そのプレイベントが9月15日に行われ、約100名の参加者が集まった。参加者へのアンケートでは約47%の人が「趣味も含め、野球のデータを分析したことがある」という結果だった。

 プレイベントでは元楽天の投手であり、現在は野球のデータ分析を行う株式会社DELTAのコーディネーターを務める川井貴志氏。弁護士でありながら株式会社DELTAでアナリストとして活動する市川博久氏が登壇。野球とデータ分析の専門家である2人が生中継されている「パーソル パ・リーグTV」で試合を見ながら、野球の基本的なデータ紹介から具体的な事例を解説するディスカッションとなった。

 ディスカッションの序盤では基本的なデータの見方として一般的な防御率、打率に始まり、OPS、WHIPといったセイバーメトリクスのデータ指標、さらにはwOBA(打者がチームの得点増加にどれだけ貢献しているかを見る指標)、FIP(守備から独立した投手の能力を見る指標)といった現在MLBでよく用いられている細かな指標も紹介された。

川井氏が現役時代に嫌だった選手は……

 イベントは参加者がパソコンやスマートフォンを使ってリアルタイムで質問する形で行われ、参加者から川井氏に対して「現役時代、特に嫌だった打者は?」と質問が挙がった。

 これに対し川井氏は「松井稼頭央選手(埼玉西武)。芯で捉えられた完璧なヒットを打たれていました。タイミングを外せなかったので三振も少なかったです」と現在もプレーを続けるベテランの名を挙げた。また、現役時代の契約更改について「交渉の場で細かいデータを出されていましたし、僕自身も『どうでしたか?』と聞いていましたね」と契約更改とデータにまつわるエピソードも語っていた。

 話はさらに具体的な事例に及んでいく。「得点に基づくプレーの価値」としてアウト別、走者別で各状況からイニングが終わるまでに入った得点の平均値を示した表が計24通り表示される。2死走者なしなら0.087ともっとも低く、塁上に走者がいるほど数値が上昇。無死満塁では2.092ともっとも高くなる。しかし1死三塁で0.906に対し、1死一、二塁では0.878と唯一平均値が減少する。この点については参加者から「ダブルプレーの可能性があるのでは」という意見も出てきた。

 この話を踏まえ、会場内でライブ中継されている西武-ソフトバンクの試合を見ながら「この状況では何点の可能性があるのか」と解説が行われた。ちょうど試合は2回裏、1死から埼玉西武・金子侑司選手のセカンドへの打球がアウトとなった場面だった。ここで辻発彦監督がリクエストを要求。ビデオ判定で一塁はセーフとなり記録は内野安打となる。アウトになっていれば2死走者なしで0.087となるところが、1死1塁となったため0.478と得点の可能性が一気に高まった。他にもプレーの種類によって得点を算出し、打撃結果によってプレーの得点価値が大きく異なることも紹介された。

楽天の現役選手でデータを重視しているのは

 イベントの最後、川井氏は「1軍で出ている選手よりも2軍にいる選手の方が困っている選手が多いです。データを活用することで選手がよみがえる可能性があると思います」と語った。また、現役引退後に在籍した楽天のチーム戦略室時代について「1年しか在籍していませんでしたが……」と前置きしてこう振り返った。

「則本昂大投手は先頭に立ってデータを使っていましたね。僕が則本投手に伝える姿を見て、若手選手たちが見てくれてトラックマンなどデータに興味を示していました。自ら考えて何か技術の上達につなげようとしたのは成果の一つかもしれません」

 10月6、7日のハッカソン当日は選手の詳細なデータといったフィールド側だけでなく、ファンクラブのマーケティングデータなどビジネス側のデータも提供される。果たしてどんなデータ分析結果が発表されるのか。データを使った新しい野球の楽しみ方が生まれるかもしれない。

【イベント概要】

<開催日程>
・ハッカソンDay1 10月6日(土)10:00~19:00
・ハッカソンDay2 10月7日(日)10:00~19:00
※応募締め切りは2018年9月28日(金)18:00

<ゲスト>
・大曽根圭輔氏(株式会社Gunosy) データ分析部マネージャー
・市川博久氏(株式会社DELTA) 協力アナリスト
・鹿内学氏(パーソルキャリア株式会社) モデレーター

<会場>
いずれの日程もTECH PLAY SHIBUYAで開催
住所:東京都渋谷区宇田川町20-17 NMF渋谷公園通りビル8F(「パ・リーグ インサイト」武山智史)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2