【現場ルポ】〈塗装プラント製造・タンク製罐のライン工業〉日本初の「囲柱ラーメン木構造」新本社での建て方開始 鉄骨造並みの高強度実現

 「鋼材と国産木材の需要を喚起したい」との構想から約10年、いよいよ普及に向け動き始めた。中部地区で塗装プラント製造およびタンク製罐などを手掛けるライン工業(本社・岐阜県可児市、社長・瀧本実氏)は事業多角化の一環として、鋼材と木材の複合構造体で鉄骨造並みの強度を実現した新建築工法「囲柱(いちゅう)ラーメン木構造」を開発した。普及を促進するため、同社は新工法で、同社の新本社建設を全国で初めて進めている。建築現場を訪れたのでルポする。(齊藤 直人)

 同工法は、120ミリ角の木柱材4本を十字状に溶接した溝形鋼の専用金物を油圧挿入によりボルトで緊結、躯体となる囲柱を組み立てる。囲柱と梁材はL字型の補強プレートで連結して建設する。これまで岐阜県立森林文化アカデミーらの研究機関と行った強度試験では、震度6の地震に耐えられる壁倍率13倍の高強度を有することを実証済み。耐力壁が無い大空間を実現できるため、建築物の設計自由度が高まることも特長の一つだ。建て方に着手した今月8日には現場見学会が催され、設計事務所、ゼネコン、ねじメーカーら関係者約100人が集り、新工法への関心と期待の視線が寄せられた。

 新本社の建築概要は敷地面積281平方メートル、建築面積136平方メートル。1階部分は鉄筋コンクリート造。2階部分は囲柱ラーメン構造。今年6月に着手した1階部分の基礎が完成し、2階部分の建設に移った。「新工法は高強度を有するものの、積層に適用できるよう、さらに改良を進めている最中」(瀧本社長)のため、今回は実質『平屋建て』の建築となる。

 建て方はあらかじめ、囲柱に組み立てられた高さ3メートルの柱(柱径30センチ角)および梁(長さ6メートル)が計18本準備された。囲柱の木材により強度が出やすい、東濃檜の集成材を採用した。梁・柱はクレーンで順次、釣り上げられ、通常は鉄骨造を手掛ける施工業者が、新工法の建て方を請け負った。基礎部と柱の接合は、専用の柱に組み込んだベースプレートの役割を果たす基礎鋼製金物をアンカーボルトで手際良く締結された。わずか数時間で大部分の建て方が完了。スピーディーな建て方も実現できる新工法は現場の「時短労働」実現の一助となりそうだ。

 今回、囲柱に採用した基礎部を除く専用金物のめっき色に黒、金、銀がラインナップされた。瀧本社長は「3色ラインナップしたのは、耐候性などの機能のためではなく、建屋内部の意匠性を検討するため」と来場者からの質問に答えた。今後、見学者からの意見を集約し、専用金物の塗装色を決定する。年内の竣工を予定している。

 同社では、新工法の商用化後は、施工協力店を募るほか、プラント製造ノウハウを生かし、囲柱組立時に使用する10種類以上の緊結金物および組み立て用設備の製作および販売を計画。28年には年間売上10億円の達成に向け、新たな事業の柱に育成する。

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