カワサキのレイ、SBK4連覇にポルトガルで王手。ダブルウイン達成もレース2後は喜ばず

 9月14~16日、アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェで行われた、スーパーバイク世界選手権(SBK)第10戦ポルトガル。長いサマーブレイクを経て始まった第10戦のレースウイークを、ジョナサン・レイ(カワサキ)がダブルウイン。2018年のチャンピオン獲得、そしてSBK 4連覇に向けて王手をかけた。サマーブレイク明けも、その強さに陰りはまったく見えない。

 SBKが開催されるのは、7月上旬に行われた第9戦サンマリノGP以来約2カ月ぶり。ここまでレイは、9戦18レース中10勝を挙げ、2番手につけるチャズ・デイビスに92ポイントの大差をつけてランキングトップに立っている。

 7月末に鈴鹿サーキットで行われた、鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦したレイは、ここでもいかんなく強さを発揮した。圧巻の速さで観客を魅了し、鈴鹿8耐を盛り上げる走りを見せたことは記憶に新しい。

 迎えたSBK第10戦ポルトガルの初日で、レイはフリー走行1回目からトップにつける。フリー走行2回目では6コーナーで軽いクラッシュを喫したが、大きなダメージはなく走行を再開してこのセッションも制す。

 チャズ・デイビス(ドゥカティ)が転倒してドゥカティパニガーレRが炎上したことによって、セッション序盤で赤旗中断となったフリー走行3回目はマルコ・メランドリ(ドゥカティ)にトップを譲ったものの、レイは初日を総合トップで終えた。

 レイはセッション後、「本当にすばらしい日だった」と語った。SBKチームは8月下旬にアウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェで公式テストを行っている。

 レイはこのときよりもタイヤのグリップが上がっていると感じており、同時にマシンにも好感触を得ていたようだ。この日記録した1分41秒台のタイムは、2013年にトム・サイクス(カワサキ)がスーパーポール2(SP2)で記録したレコードタイム、1分41秒360にコンマ5秒にまで迫るもの。このタイムにも「レースタイヤで記録したタイムとしては、充分速いもの。とても満足だよ」と仕上がりのよさを思わせた。

 予選のSP2ではユージン・ラバティ(アプリリア)にポールポジションを譲ったものの、2番手につけたレイ。なお、この日の予選は、レイを含むSP2の8番手までが、これまでのプラクティスレコードを更新している。

 レイは金曜日のフリー走行から見せていた好調さをそのままに、レース1、レース2ともに制してダブルウインを果たした。しかし、レイがレース後に見せた表情は違っていた。
 土曜日に行われたレース1では、2番手から好スタートを切ると安定したペースで周回ごとに2番手以下に対しアドバンテージを広げ、そのまま独走優勝。「今週末、僕たちは強く戦略も何通りかあった」と語るレイは、このレースで1分42秒台から43秒前半で周回する。

「タイヤのグリップが落ちて、後半にタイムが落ちたときでも、43秒台のタイムを維持できた。今回のレースの鍵はそれだったよ」

 レース1ではSBK通算65勝を挙げ、「ポルティマオでこの勝利数を達成できたことはうれしいね。ここには北アイルランドのファンがたくさんいるから」とも語った。

レイはレース1で、序盤から安定したラップを重ね、独走態勢を築いた

 一方、レース2後も優勝を飾ったレイがレース後に見せたのはナーバスな表情だった。レイはレース2について、最初にこう切り出している。「難しいレースだった」

 リバースグリッドにより、レース2を9番手からスタートしたレイは、オープニングラップで早くも3番手にまで浮上し、チームメイトであるサイクスの背後につける。サイクスを3周目で交わし2番手につけると、中盤はデイビスとのトップ争いを展開した。

「デイビスはブレーキングが遅く、ストレートで速かった。デイビスを抜くのに少し時間がかかってしまったよ」

 この日の気温は29度、路面温度41度。前日のレース2に比べ、少し路面温度が高くなっており、それがタイヤのグリップにも影響を及ぼしていた。

「今日、僕のペースは(昨日よりも)少し遅かった。だから、タイヤを少しずつ使うようにしたんだ」

リバースグリッドにより、レース2を9番手からスタート

 12周目の11コーナーでデイビスがややラインを外したすきにトップに浮上したレイは、ペースをコントロールしながらトップをキープし、そのままチェッカー。

「25ポイントを獲得するために、全力のレースだった。本当にうれしいよ」レース後に浮かべていた硬い表情は、レイにとって厳しいレースを物語るものだったが、同時にそんなレースを制した安堵をにじませていた。

 ポルトガルでのレースはレイにとって簡単なレースではなかった。それでもダブルウインを達成し、合計50ポイントを手にすることができるのが、レイの強さたるゆえんだろう。前人未到のSBK 4連覇達成に向け、レイは勝ち星を重ね続ける。

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