西武「熱男」山田が“師匠”の教えでプロ1号 「冷静に打席にも立てました」

プロ初本塁打を放った西武・山田遥楓【画像提供:(C)PLM】

オフに「憧れ」のソフトバンク松田と自主トレ

■西武 12-4 日本ハム(19日・メットライフ)

 西武は19日。本拠地メットライフドーム6連戦の最後となった日本ハム戦を12-4で大勝。その勝利を引き寄せたのはプロ初スタメンを果たした4年目の元気印・山田遥楓(はるか)のバットだった。

「中村のサードスタメンが続いていたので、DHでと。(山田)遥楓を使いたかったのもある」

「8番・三塁」で高卒4年目・山田遥楓のプロ初スタメン起用を決めた辻監督。9月30日に22歳を迎える若獅子に、それが告げられたのは練習前、アーリーワークの時だった。

 優勝争いを続ける中でのスタメンに山田も「緊張して練習が全然。練習した記憶がないくらい。全然。緊張しちゃって」と苦笑い。それでも先輩たちからかけられた声はしっかりと覚えていた。「試合前にいろんな先輩から声をかけてもらいました。『緊張で忘れるだろうけど、一生懸命頑張れ』って」。それは誰もが通る道。現在はレギュラーとして出場している選手たちや、ベンチで出番を待つ選手たちが通ってきた道だからこそ、山田の心境が手に取るようにわかるのだろう。

 6月16日の中日戦でプロ初打席を踏んだ際には「思いっきり行ってこい!」と送り出され、初球からフルスイング。「いいスイングだ」と首脳陣から褒められたものの「足が震えた。1軍と2軍では全然違う」と、その空気感に体は萎縮していた。

 しかし、今回は先輩の声かけも功を奏したのか「試合が始まってからは意外と冷静に打席にも立てましたし、守備にも入れたので、自分の中では『結構いい感じだな』って思っていました」と、高い集中力でプロ初スタメンの試合に臨んだ。

「正面に行っちゃったけど、いい当たりをしていた」と、辻監督も評価した第1打席の遊直を経て、4-1で迎えた4回の第2打席。この打席、山田は狙い球を絞っていた。「(第1打席で)チェンジアップを投げてきたので、ここはまっすぐしかないという感じで、まっすぐ一本で振り抜きました」。

ホームラン後には「熱男」のパフォーマンス

 実は、今回のまっすぐ打ちは、入団当初から常々「憧れ」と山田が語るソフトバンク・松田宣浩のタイミングの取り方を模倣してのもの。「今年のオフに、自主トレで一緒に練習させてもらって、その時に聞かせてもらったのですが、松田さんはまっすぐを『1・2の3』で打ちに行くスタイルなんですけど、(ボールを叩くポイントを)前で弾きかえすというのを言われたので」。“師匠”の考えを実行に移し待望の一発を放った。

 お立ち台では「不思議な感覚。感覚がないという感じ」と、打球の感触について答えていた山田。打った瞬間から、二塁ベース付近まで、ずっと打球方向を見ながらベースを回っている姿が印象的だった。「(スタンドに)入ったという実感が湧かなくて、ファンの人たちの反応で入ったのかなって確認できたくらいですね。」と、ファンの歓声で自身の初本塁打を認識し、三塁ベース付近でようやく笑みがこぼれた。

 ファンも、そしてベンチも最高潮の盛り上がりを見せる中、飛び出したのが拳を突き上げる“あの”ポーズ。尊敬する松田の専売特許「熱男~!」のポーズだが、松田本人から「やっていいよ」と許諾済みとのこと。「みんなからもやれやれって言われたので」と、先輩方の要望もあってのパフォーマンスだった。

 思えば昨年、1軍初昇格を果たしたものの、出場機会なくファームへ。今季も、6月15に1軍登録。翌日プロ初打席を記録したものの先発投手との入れ替えなどで計3度、ファームとの往復を味わっている。「チーム状況的にもしょうがないことだとは思うのですが、本当に悔しくて『活躍してやる!』っていう思いでやってきた」と、元気さの中に秘めた反骨心を持って、今回の大仕事を成し遂げた。それだけに「本当に今日の1本は嬉しいです」と、笑みを浮かべていた。

 山田は辻監督とは同郷の佐賀県出身。指揮官は「いいところがないと、上では使わない」とした上で「今年に関しては、投手の谷間で(登録枠に)余裕があるときに上にあげて経験をさせてというのがあった。今回は中村が疲れていることもあるし。うまいことタイミングが合わさって(プロ初本塁打)。ま、嬉しいですね」と、最高の形で現れたことに、頬を緩めた。

 今後の起用法については「サードのホットコーナーで、常に、よくも悪くも元気があるところ彼の魅力。これからもどんどんチャンスがあれば使っていきたいと思います」と、レギュラー陣の状況を見ながらではあるが、優勝を争う渦中においても、チャンスを与えることを示唆した辻監督。

「若い選手が出て経験を積んで結果を出して自信にしてくれればいいし、次世代を担う若い選手たちが、チームの力になるためには経験させるのが一番。山田のような若い選手が活躍すれば、チームに勢いがつくし明るくなるし、いいことづくめだね」と、再び頬を緩めた。

 プロとして、確かな一歩を残した山田遥楓。しかし、あくまでこれは始まりにすぎない。「自分はまだ1軍の選手みたいに輝くことはできないのですが、少ない出番で、チャンスをもらえたらモノにできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」。初めてのお立ち台で、はっきりとした話し方で、自分の思いを伝えた若獅子は、今後のチャンスで何を見せてくれるのか。(岩国誠 / Makoto Iwakuni)

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