ペットを守るために知っておきたい「自然毒のリスクプロファイル」その1:ビーチの散歩で注意すること。

ペットがフグ中毒になってしまったら

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(※画像はイメージです photo AC)

猛暑が続いた夏も終わり、めっきり涼しくなって、旅先で秋の自然や味覚を堪能する時期になった。

ペットを連れての旅行は楽しい。旅先のビーチで犬と一緒にジョギングしたり、フェッチしたりして、犬も飼い主も日頃のストレスを吹き飛ばし、旅を満喫できると思う。

ただ、海へのペット連れ旅行で気をつけなければならないこともある。旅先で売られている魚の加工品や刺身、砂浜に落ちている魚の死骸を食べてしまったために楽しい旅行が一瞬にして、悲しい想い出になってしまうこともあるのだ。

たとえば、ビーチでロングリードを使って散歩したり、サンセットの景色に夢中になって写真を撮っていて、犬の鼻先を見逃してしまい、死んだ魚を一瞬にして犬が食べてしまった。。さらにそれがフグだったら。。高い確率で20分以内に死亡してしまうことも予測される。

First Aid Treatment For A Poisoned Dog (出典:Youtube)

■自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_01.html

「食後20分から3時間程度の短時間でしびれや麻痺症状が現れる。麻痺症状は口唇から四肢、全身に広がり、重症の場合には呼吸困難で死亡することがある。」(出典:「自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒 厚生労働省」)

以下は私が行っているペットセーバーの受講者から伺った話。

「友人がビーチで犬と遊んでいるときに電話が掛かってきて、目を離した一瞬に犬がビーチに落ちていた何かを食べて呑み込んだのに気づいた。

犬の口を開けてみると明らかに腐ったような生臭さと口の中に魚の皮のようなものが残っていたため、死んだ魚を食べたことがわかった。

彼女は慌てて、犬を吐かそうと持っていた水を飲ませたりしたが、犬は吐く気配もなく、しばらくして、吐く気配を見せた。すでに毒が回っていたのか、犬がよろけて歩くような状態になった。

広いビーチの水際から駐車場までやっとの思いで犬を歩かせて、重たい身体を頭とおしりと半分ずつ持ち上げながら、後部座席の下に載せて、獣医に向かおうとしたところ、さっきまで元気だった犬がグッタリとしていて、息絶え絶えの状態で、獣医の所にたどり着いたときにはすでに意識のない状態になった。

犬を動物病院内に搬送するため、獣医と動物看護士に手伝ってもらい、バイタル(脈や呼吸などの生命の兆候)を確認したところ、すでに死亡していた」

この話の後に「こういう事故が起こった場合、水以外に何も持っていない飼い主はビーチで何が出来たのか?」というご質問を戴いた。毒が体内に回っているペットに対しては、搬送のための助けを呼んで、人工呼吸の実施が選択肢として考えられる。ビーチが広く、水際から駐車場まで300m以上あることや周りに普段は常駐しているライフセーバーも引き揚げた後だったので、飼い主しか、助ける人が居なかった状況とのことだった。

「フグ中毒に対する有効な治療法や解毒剤は今のところないが、人工呼吸により呼吸を確保し適切な処置が施されれば確実に延命できる。」(「自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒 厚生労働省」引用)

しかし人工呼吸を実施しながら、携帯の音声モードで獣医に通報し、ビーチに来てもらい、酸素投与ができたとしても、解毒剤がないため、その犬の生命力にもよるが、助かる可能性は低いのではないかと予測されている。

人間における動物性食中毒の特徴として、フグ中毒が患者数・事件数とも最多だ。死亡者の98%は猛毒のフグ毒テトロドトキシンによるフグ中毒という厚生労働省のページに記載がある。

テトロドトキシンは神経毒で、人の最少致死量は結晶で2mgとされる。フグが死んでビーチに打ち上げられ、干からびた状態になっても、テトロドトキシンは分解されないため、あやまって犬や人が食べてしまった場合、有効な解毒剤もないことが知られている。

また、食後20分から3時間程度の短時間で症状が現れる。一般的にフグ毒による中毒症状としては、まず唇、舌、指先などの痺れから始まり、知覚麻痺、運動機能障害、 言語障害、呼吸困難、血圧低下などの症状が現れ、末期には意識が混濁し、呼吸停止により、1.5~8時間で死に至る。

様々な説があるが、6〜8時間以上経って発症した場合は比較的軽症で、適切な処置により死ぬことはほとんどないとされている。

中毒症状は臨床的に4段階に分けられる。ヒト(体重60kg)の致死量はテトロドトキシンに換算して1~2 mgと推定されるが、犬はそれ以下でも致死量に相当することが考えられる。

第1段階(数分〜45分): 口唇部および舌端に軽い痺れが現れ、指先に痺れが起こり、歩行はおぼつかなくなる。頭痛や腹痛を伴うことがある。

第2段階(約10分〜60分): 不完全運動麻痺が起こり、嘔吐後まもなく運動不能になり、知覚麻痺、言語障害も顕著になる。呼吸困難を感じるようになり、血圧降下が起こる。

第3段階(約15分〜6時間): 全身の完全麻痺が現れ、骨格筋は弛緩し、発声はできるが言葉にならない。血圧が著しく低下し、呼吸困難となる。

第4段階(約20分〜24時間): 意識消失がみられ呼吸が停止する。呼吸停止後心臓はしばらく拍動を続けるが、やがて停止し死亡する。
(「自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒 厚生労働省」引用)

また、フグ以外にもヒスタミンによる食中毒は毎年起こっており、犬に刺身や犬の食用のために無毒化されていない魚の加工品を食べさせないことも大事だ。

ヒスタミンによる食中毒は、赤身魚に多く含まれるアミノ酸の一種であるヒスチジンが、多量のヒスタミンに変わってしまった時に起こる。

赤身魚を常温で長時間置いたり、凍結・解凍を繰り返すと、ヒスタミン産生菌が増殖し、菌が持つ酵素の働きで、ヒスチジンがヒスタミンへと変わっていく。

赤身以外でも、イワシのすりみやカジキ、マグロ、ブリを調理したものなど、多くの場合、これらの魚の加工品を犬に食べさせた直後から1時間以内に、犬の顔面、特に口の周りや耳たぶが赤くなり、じんましん、頭痛、おう吐、下痢などの症状が出る。重症の場合は、呼吸困難や意識不明になることもあるが、現在、死亡事例は確認されていない。

(出典:「ヒスタミン食中毒の特徴」東京都健康安全研究センター健康危機管理情報課)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/anzen_info/others/his/hisleaf.pdf

アメリカでは、下記のリンクのように獣医師ネットワークが飼い主に向けて、非常にわかりやすい、ペットの救急法や日常生活の健康管理法、生活環境保持や災害時の対応等を映像にしている。

■Veterinary Network
https://www.youtube.com/channel/UCZBHxcANZ_W0MLi1CfdwMxw/videos

今年、日本でも多くの消防士や救急救命士に消防現場で役立つ、ペットの心肺蘇生法や止血法、骨折時の副子固定法、呼吸管理、心のケアなど、消防士用のペットセーバープログラムを受講していただいた。

いずれは、ライフセーバーやライフガードにもペットの救急法を受講していただき、ペットの海辺の事故の予防法や対応方法、ペットの熱中症対応方法、水中毒、熱性けいれん、溺れたペットの救助法や救急法を身につけて戴きたい。

また、オーストラリアや米国のように消防士やライフセーバーが、現場で医療用酸素等緊急酸素使用を行えるようになれば、今回のような事故発生時に命が助かる可能性が高まると思う。

(了)

ペットライフセーバーズ
https://petsaver.jp
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