被災住民の苦闘が続く呉市天応で活動を続けるボランティアのプロ集団『コミサポひろしま』

被災から2か月…復興への道のりはまだ遠く

呉市天応地区に2度目の取材に訪れたのは9月11日(火)。
被災から約2か月経ったこの日も、『コミサポひろしま』の代表を務める小玉幸浩さんは4件の現場を駆けまわりながら、作業の進捗を見守っていた。

『コミサポひろしま』は、平成26年に発生した広島土砂災害を契機に立ち上げられたプロのボランティア団体で、立ち上げ以降、全国の被災地で一般ボランティアでは対応が難しい土砂の撤去や壁・床はがし、床下の泥だし作業を行ってきた。

西日本豪雨災害が起きた日も、茨城県で活動していた。
災害発生を受けて、小玉さんは呉市に駆けつけた。
災害直後は行方不明者の捜索などが優先されるため、物資の手配などその時にできることに奔走した。
重機やトラックを集め、復旧作業を開始できたのは、災害が起きてから1週間ほど経ってからだった。

あれから2か月。
道路や線路上の土砂やがれきの撤去は進み、ついに呉線広-坂間、山陽線の2区間の運転が9月9日(日)に再開するなど、復旧から復興へのステージを一歩踏み出した呉市。
一方で、少し足をのばせば未だ土砂が流れ込んだままの、手付かずの被災家屋も多く残され、被災者の中には、「再建するなんて無理」とあきらめて地元を離れたり、「見捨てられてしまった」と絶望感にさいなまれる人も多い。
そうした埋もれがちなニーズも、呉市社会福祉協議会やボランティアセンターとも連携しながら丁寧にすくいとるようにしているという。

実は小玉さんは呉市出身。今回の被災地は地元でもある。
小玉さんの活動を知って、友人・知人が直接救いを求めてくるケースもあるという。
取材当日も、ある知人から相談があり駆けつけた家屋で、90歳のおばあちゃんが「誰もきてくれないから」と自分が床下にもぐって土砂をかきだしていたそうだ。
「今日だけで床下の泥だしが必要な家屋が4件見つかったけえね。この調子じゃ、まだでてくるよ。ボランティアセンターに、ニーズをもう一度洗い出すよう頼んできたんよ」
復興への道のりはまだまだ遠いと感じている。

呉市天応に全国からボランティアが集まる理由

『コミサポひろしま』が呉市で活動を始めて以来、小玉さんのもとに全国からボランティアが集まっている。
取材した日は、熊本県、千葉県、島根県から消防隊チームが、また茨城県、愛知県から若手僧侶のボランティア団体『慈友会』『茨城県曹洞宗青年会』と宮城県のボランティア団体『テラセン』が駆けつけていた。
そうした状況に「ありがたいよね」と感謝する小玉さんだが、その種をまいてきたのは小玉さん自身にほかならない。

平成27年関東・東北豪雨では鬼怒川が決壊した茨城県常総市で半年以上、平成28年熊本地震の時には益城町で1年8か月、平成29年の九州北部豪雨では福岡県東峰村で約1か月にわたり活動した。
小玉さんの元に集まる人は、どこかで小玉さんに助けられたり、被災地で小玉さんの活動を見てきた人たちだ。
「小玉さんの人柄に惚れて」「小玉さんが困っていたら行かないわけにはいかない」と、皆が口をそろえる。

求められるのは“被災者に寄り添う”支援

そんな中、ある一つの現場から嬉しい報告があったという。
家屋の1階部分に土砂が流れ込んだその家の家主は「もう住めない」と家を手放す決心をしていたが、その家主の姉が「親が残してくれた家だし、自分が直して住もうかと思う」**と相談してきたそうだ。
「こういうのが一番、嬉しいよね」と顔をほころばせる小玉さん。

住み慣れた我が家を解体して地元を離れるか、リフォームして住み続けるか、誰しもすぐに決められる問題ではない。
最初はみんな混乱しているし、突きつけられたあまりの惨状に再建をあきらめてしまう人も多い。
しかし、時間の経過とともに混乱状態を抜け出し、落ち着いて周りを見渡せるようになると、地元にとどまり、再建しようと思い直すこともあるという。
家主が解体かリフォームか悩んでいる場合は、リフォームすると決意したときに少しでも再建しやすいように、柱や床を丁寧に養生し、手作業中心での泥だしを指示する。

壊れてしまったコミュニティはなかなか元には戻らない。
そういう現場もたくさん見てきた小玉さんだからこそ、簡単にあきらめてほしくないという思いがある。
しかしそれは決して誰かに強制されるものではあってはならないこともわかっている。

被災者にゆっくり考える時間をあげること。
効率的ではないけれど、常に被災者に寄り添った復旧と支援を続ける、それが小玉さんのモットーであり、『コミサポひろしま』の活動が多くの人に支持され続ける理由だ。

<関連サイト>
コミサポひろしま公式サイト
コミサポひろしまFacebook

いまできること取材班
文・写真 イソナガアキコ

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