【総裁選】神奈川議員、小泉氏以外19人が安倍首相に投票

 安倍晋三首相(自民党総裁)が石破茂元幹事長を破り連続3選を決めた20日の総裁選で、神奈川の国会議員は全20人のうち95%に当たる19人が首相に1票を投じた。県内の地方票は首相が61%を固めたものの、石破氏も下馬評を上回る支持を獲得。国民意識に近い党員は「安倍1強」を懸念して圧勝回避を選んだ形で、国会議員とのギャップが浮き彫りとなった。

 「全国の得票率を上回ることができて一安心だ。安倍総理の圧勝だったが、石破氏のメンツも発言力も保つことができた。党内融和で一丸となって進んで行くには絶妙な数字だ」

 安倍選対の甘利明事務総長(衆院13区)は、県内地方票で石破氏が善戦したことをたたえた上で、「自民党の健全性が現れた」と満足げに語った。

 神奈川の地方票(有効投票数3万4272票)は、安倍氏2万901票、石破氏1万3371票。選挙中に県内で街頭演説がなかったことなどもあり、投票率は6年前を5・05ポイント下回る58・70%だった。

 早期に首相3選支持を固めた麻生派の所属議員と、首相の右腕として存在感を示す菅義偉官房長官(2区)を慕う無派閥の国会議員が大半を占める神奈川。甘利氏も前面に立った安倍陣営は「重鎮のお膝元での圧勝」にこだわって党員への電話作戦を徹底しただけに、石破氏が獲得した40%近くの支持は「正直、驚いた。悔しい結果」(無派閥議員)だった。

 それでも、菅氏は「非常にバランスの取れた結果だ」とし、安倍政権の継続に「非常に責任は重い」と強調。県連会長の小此木八郎防災担当相(3区)も「引き続き国民の期待に応えていかなければならない」と表情を引き締めた。

 首相に投票した地方議員は「外交が不安定な時に安定政権は歴史的意義がある」「経済の好循環など良い流れを断ち切る必要はない」などと語った。

 一方“安倍一色”との見方もあった県内で唯一、石破氏支持に回ったのは小泉進次郎筆頭副幹事長(11区)だった。投票後「多様な時代にいろいろな声があって当然だ。20人中19人が安倍総理を支持している中で、1人くらい違っていい」と明かし、県内の地方票の結果には「驚いた。地元で聞く声に近い」と語った。

 実際、安倍氏サイドによる「圧力」を危惧する声は、地方議員からも聞こえた。石破氏に1票を投じた議員は「恐怖政治的な政権運営で、多様な意見を戦わせて政策を練り上げる自民党本来の多様性が失われている」と指摘。別の議員は石破氏の戦略を疑問視した上で、「森友・加計学園問題で説明責任を果たしていないと見ている厳しい世論に寄り添って判断した」とし、白票を投じたと打ち明けた。

両院議員総会で健闘をたたえる声援に応える安倍氏(右)と石破氏=自由民主党本部8階ホール

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