[360°Encyclopedia]Vol.25 知られていないかもしれないVTuberの技術的な側面

txt:茂出木謙太郎 構成:編集部

VTuberコンテンツ制作の技術情報

自分たちだけでVTuberのコンテンツを作るときの技術情報は、Webを検索すると色々出てくるのだけど、いろいろと制作を進めていくことで改めてわかることが多いので、ちょっと書き留めてみようかと思う。

そもそもこれまでの作り方で何がいけないの?と思うかもしれないけど、いったいどんな時に何が起きているのか?という状況から説明します。

個人でやっているときや、単体のVTuberを扱っているときには気にならないけど、イベントや企画などで複数人集まってきた時のそれぞれの操作の扱いについて、実際には何の規格統一もされていないわけなので、当然操作方法がばらばらということがよくある。操作方法がばらばらということは、一か所に集めて操作をお願いするステージを作る側があらかじめそれに適応させておくか、もしくは共通仕様を用意して、それにキャラクターを乗せていく方法かのどちらかしかない。もしその共通仕様が、これまで操作していた方法と全く違っていたら、現場で大きく問題が出ることは間違いがない。

モデルの形式はVRMとFBXどっちがいいの?

これまでいくつかの有名VTuberの制作現場でお打合せを重ねた結果、メインの配信でVRMを使用しているところは少なかった。理由はIKinemaの存在。現在IKinemaはVRMに対応していない。トラッキングのシステムをVIVE+IKinemaと考えているところは多く、そうなるとキャラクターモデルの制作はFBXというのが今のところ業務レベルでは多い。また、表現したいエフェクトやポリゴン数などのことを考慮しても、同様の結果になることが多い。

VRChatのような日本発でVRM動作を前提とした場合には、2万ポリゴンが上限になっている場合があり、もしこれ以上のポリゴン数をと考えると、動作させるプラットフォームもおのずと縛られることになる。

もし、VIVEではなくPerception Neuronをトラッキングに使うとなるとまた注意が必要だ。なによりも磁気干渉がネックになりやすく、狭い部屋やほかの機材との合わせ技がやりにくい。磁気センサーの異常を常にモニタリングして、いつでもキャリブレーションをやり直せるようにしないといけない。もちろんHMD付けられないし、他の機会もかなり難しい。ということで、何気にPerception Neuronは複数で撮影したり、変則的に撮影するのには向いていないことが分かる。

VIVEの弱点は何かというと、狭いところで使いにくい。光るもの、反射するものがあると使いにくい。複数使うときの遮蔽が大変。と言ったところ。実際ゲームショーのイベントなどでVIVEを使ったパフォーマンスを検討しても、スペースの問題で方法を変更しないといけないことが多々ある。最近は解消されたけど、トラッカーの品薄状態が続いたのも地味に痛い。メルカリに何度お世話になったことか…。

赤外線の混線を避けるという目的であれば、Oculus Riftを使用する方法に切り替えるというのも一つの手だ。この問題は前述のIKinemaが使えないという問題が生じる。また、トラッカーを追加することができないので、拡張性に乏しい。Oculus Riftを使ったもう一つのメリットは、Touchによる指のセンシングがVIVEに比べて繊細だということ。細かい動きは難しくても、ちょっとした指の表情はTouchを使うことでなんとなく解消されるので、ぜひ試してみてください。Oculusを使用するのであれば、一番簡単なのはFinalIKを使ったトラッキングではないかと思う。FinalIKを使うと、動きが少しカクカクしてマリオネットのような動きになりやすい。そのため、映像を見ていてもこれはFinalIKを使ったなとわかるほど。

そもそも、既存のVTuberは足のトラッキングをさほど重視していないものが多い。なので、上半身をいかにきれいに映すことができるか、それを共存させることができるか?といったことに集中するのが良いようだ。

ここまできたら、あとは撮影スタジオに関する準備。まず、VTuberたちに進行の指示出しをしたり、カンペを見せたりしないといけない。これは話が戻って演者にHMDをかぶせるべきかどうか?という問題にまで発展しそう。

HMDを被るメリットは、空間を共有して、中の人とコミュニケーションをとる演技をしやすい。デメリットは、外部からの指示が分からない、重いので長時間付けられない、体質によっては酔うなどが考えられる。

運営から考えると、指示が見えないのはもってのほかなのだが、演出から考えると、ちゃんと空間内でお芝居ができるようにお互いが見えたほうが断然良いということになる。

全体的に、あちらを立てればこちらが立たず…といった状況。これらをうまくまとえんて、複数人のVTuberを登場させる番組制作を現在進行中。うまくいけば11月くらいにはお披露目できるかもです。

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