【平成の長崎】夢を乗せ初の長距離航海に出発 TSL実験船「飛翔」 平成6(1994)年

 超高速貨物船テクノスーパーライナー(TSL)の実験船、飛翔が8月20日午前8時、長崎港の三菱重工長崎造船所香焼工場を出発、千葉県市原市の三井造船千葉事業所までの長距離航行試験に向かった。
 飛翔は、運輸省と造船大手7社でつくるTSL技術研究組合が平成元年度から開発中の実験船2隻のうちの1隻。実用船の2分の1のサイズで全長70㍍、幅18.6メートル。三井造船と三菱重工が共同建造し6月末、香焼工場で完成した。
 これまで五島沖で約10回の実海域試験を繰り返し、①最高時速54ノット(約100キロ)超を記録②台風接近による最大波高6メートルでも40ノット(約74キロ)で航行-など「期待以上の成果」(同組合)を上げている。
 今回が初の長距離航海。TSLの拠点港誘致に名乗りを上げている各港に寄港予定で、20日は大分までの約600キロを航行。その後、宮崎、和歌山、静岡などに寄り30日、次の実験基地となる三井造船千葉事業所に到着する。合計航続距離は約2300キロ。35-40ノット(70キロ前後)で走りながら各種性能などをチェックする。
 出港に先立ち、船内で記者会見した吉識恒夫同組合第3技術部会長は「技術的、性能的に問題点はない。」と実用化への自信をみせた。
 飛翔は来月から伊豆諸島沖で試験を展開、11月下旬ごろ長崎へ"帰港"。来年度以降、実際に貨物を載せた試運転に移り、90年代後半の実用化を目指す。
(平成6年8月21日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

初の長距離航行試験に向かうTSL実験船、飛翔=20日午前8時すぎ、長崎港

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