マンション住民の高齢化

 高齢化が進めば、いずれこうなりますよ-。この手のシミュレーションは、きちんと心の準備をして受け止める必要がある。その一つとして、マンションに関する話を聞いた▲今やマンションの世帯主の半数以上が60歳以上だという。今後、住民がさらに年を取り、判断力が落ちて認知症が疑われる人が増えていったら▲住民が修繕などの重要事項を意思決定する管理組合が、必要な委任状を集められず機能不全に陥る可能性がある、と専門家は指摘する。水道やガスの止め忘れ、徘徊(はいかい)などのトラブルが相次いでも、適切な対処が難しくなると▲現在でも、高齢住民の生活ぶりを心配する相談が、地域包括支援センターに寄せられるという。職員が状況を確認しようとマンションを訪れても、インターホンで面会を拒まれる。一戸建てとは異なり、玄関までたどり着いて直接顔を合わせるのが難しい▲高齢化が進めば、マンションに限らずどんな地域社会でも、従来通りの生活維持が困難な未来が待ち受けるだろう。ただ、多くの住民が一つの建物で生活するマンションでは、問題はより凝縮した形で表れるのでは▲そんな未来を招かず快適に暮らし続けるためには、今どんな対策を講じておけばよいのか。簡単に答えを見いだせない問いが、マンションの中にもある。(泉)

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