NPB復帰目指しBCリーグで3年 元Gボウカー感謝「未来の可能性を広げてくれた」

福島ホープスでプレーするジョン・ボウカー【写真:佐藤直子】

いつ何時も手を抜かずプレー「若い選手の良きお手本でありたい」

 ルートインBCリーグの福島ホープスは今季、4年連続で地区チャンピオンシップに進出を決めた。残念ながら、3年連続で群馬ダイヤモンドペガサスの牙城を崩せずにシーズンを終えたが、3割を超える確実な打撃でプレーオフ進出の大きな原動力となったのが、ジョン・ボウカー内野手だ。かつてメジャーではジャイアンツ、パイレーツ、フィリーズでプレーし、NPBでは巨人、楽天に所属したベテランは、何を思いながら3年目を迎える福島でプレーしたのか。

 BCリーグ福島に入団したのが2016年以来、毎年3割を超える打率(.322、.384、.359)、通算44本塁打169打点の働きで、打線の中軸を担ってきた。チームの優勝を目指すと同時に、個人として掲げる目標はNPB復帰。今季から26歳までという年齢制限が導入される中、35歳ベテランは手を抜くことなく、誰よりもハツラツとしたプレーを見せてきた(各球団5人のオーバーエージ枠あり)。

 メジャーでは通算240試合、NPBでは通算239試合に出場。チームでは誰よりも多くの経験を持つ助っ人は「若い選手は自分の姿を見ている。良きお手本でありたい」と真摯に野球と向き合い続けた。BCリーグでは、基本的に宿泊を伴う遠征はない。福島から群馬まで片道3時間以上のバス移動をした後で試合を行い、また片道3時間以上をかけて福島へ戻る。翌日にホームゲームを行い、その次の日には新潟へ日帰り遠征。米マイナー時代に5時間を超えるバス移動を繰り返したとは言え、10年以上も前の話だ。日本規格のバスの座席に188センチ、86キロの体はやや窮屈だが、到着すれば文句も言わず、入念なストレッチから1日をスタートさせる。

「自分はメジャーもNPBの1軍も知っているから、時には『これは厳しい環境だ』と思うこともあるけど、若い選手たちは高校や大学を卒業したばかりで、これが当たり前の環境だと思っている。だからこそ、彼らの前では文句は言わないようにしているし、疲れた様子も見せないようにしているんだ。この環境でプレーしながら、いいパフォーマンスを続けられれば、NPBへの道は開ける。みんな、そう思いながら毎日一生懸命にプレーしているから」

 ボウカー自身、NPB復帰の目標は諦めていないが、同時に時間が経つにつれ、実現の可能性が低くなっていることも理解している。岩村監督によれば、昨年とあるNPB球団が獲得に興味を示したことがあったという。だが、ちょうどその頃、練習中にボールを顔に受け、数試合の欠場を余儀なくされた。結局、NPB球団との話は白紙となった。

ボウカーがチームに抱く思い「監督をはじめ、みんな本当にいい仲間なんだ」

 もう一度チャンスがあるかもしれない。そんな願いを託しながら「打席での集中力を意識しながら」プレーした今季は、打率.359、9本塁打、49打点の成績ながら、シーズン中に声が掛かることはなかった。岩村監督は「NPB球団との需要と供給が合うか合わないかもあるし、独立リーグでいい成績を残すのは当たり前。打撃も守備も、ほぼ完璧なパフォーマンスでアピールできなければ、NPBには認めてもらえない」と、厳しい実情を語る。

 もちろん、心が折れそうになったこともある。それでもボウカーが福島でプレーし続けるのはなぜか。それは、野球が好きだから、そして福島ホープスが好きだから、だ。

「この年になって、野球をプレーし続けることは難しい。その場を与えてくれたのがホープス。若い選手と一緒にプレーすることで、いい刺激を受ける。監督をはじめ、みんな本当にいい仲間なんだ。日本の文化や福島の人々も大好きで、自分にとって野球のシーズンにあたる半年を日本で過ごし、半年をアメリカで過ごすというサイクルが、とてもバランスが取れているんだ。もちろん、今後について考えることもあるよ。永遠にこの状態を続けることはできないから。ただ言えるのは、福島で過ごした3年は、未来の可能性を広げてくれたということだね」

 来シーズンも福島に戻ってくるのか問われると、温和な笑みを浮かべながら「う?ん……まだ分からない。オフにゆっくり考えてみる」と語った。この冬、ボウカーがどんな決断を下すのか、それはまだ本人にも分からないのかもしれない。どんな決断を下すにせよ、3年間、福島のためにプレーし、盛り上げてきた助っ人の意思を、チームやファンは温かくサポートしてくれるに違いない。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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