山口さん全員集合! バスツアーは旅行の中身で勝負

 休日に小旅行を楽しみたい秋の行楽シーズン。旅の行き先を物色していると、名字が「山口」の人だけ参加できるという、一風変わった日帰りバスツアーの募集が目に留まった。タイトルは「7時だよ! 山口さん全員集合!!」。行き先は山口県、同行するバスガイドや運転手、添乗員も全員が山口さんという徹底ぶりがおもしろい。企画した長崎バス観光(長崎市)で、話を聞いた。

 「こんなツアーは初の試み。完全な遊び心です」と商品開発部の北浦哲治部長。同社は「あじさいツアー」の名称で長崎発の日帰り旅行を中心にツアー商品を企画・催行し、年間延べ1万人前後が参加している。夏と冬は宿泊旅行の「特別企画」も展開。バスツアーの内容は2カ月おきに更新し、常時30~40種類を募集している。

 同部は、営業や窓口の担当者らを含めた約10人で週1回、商品開発会議を開いて検討。山口さん限定のツアーは9、10月分で両月各1回募集する。血液型などで参加者を限定するアイデアも出たが、県内最多の約3万人とされる「山口」縛りで試すことにした。

 9、10月は、佐世保市世知原町で世知原茶入りの枕を作る初企画も。定番ツアーに比べて客が集まりにくいリスクもあるアイデア企画だが、登場する背景には業界を取り巻くある変化が影響している。

 2016年1月に起きた長野県軽井沢町のスキーバス転落事故を受け、国土交通省は貸し切りバス料金について、運行時間と距離に基づき国が定める運賃下限規制を厳格化。それまでバスツアーは価格競争が激化していたが、現在、価格帯は高水準で横並び。大手の撤退もある。北浦部長は「価格でなく旅行の中身で勝負しなければ」と明かす。

 「バスツアーは高齢者や女性の利用が多い傾向。忙しい中でやっと取れた休みを利用して参加する人もいる。非日常の楽しさを提供したい」と北浦部長。「あじさいツアー」の問い合わせは長崎バス観光旅行センター(電095・814・8501)。

「価格でなく中身で勝負したい」と話す北浦商品開発部長=長崎市、長崎バス観光

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