意思決定の場にもっと女性を ジェンダーの壁や不利益どうなくす 津田塾大高橋学長に聞く

©株式会社熊本日日新聞社

 ◇たかはし・ゆうこ 1957年、広島県出身。津田塾大英文学科卒、筑波大大学院修士課程修了。スタンフォード大、ウェルズリー大のフルブライト研究員などを経て、16年4月から津田塾大学長。専門はアメリカ社会史(家族・女性・教育)、ジェンダー論。

 東京医科大が入試で女子を一律減点にしていた問題や、国会議員の性的少数者(LGBT)への問題発言は、日本社会に根差すジェンダー(社会的性別)の壁を浮き彫りにした。ジェンダーの壁や不利益をどうなくすか。津田塾大では戸籍上は男性でも心は女性というトランスジェンダーの学生受け入れを検討している。ジェンダー論が専門で、このほど講演のため来熊した同大の高橋裕子学長(61)に聞いた。(浪床敬子)

 医科大の入試差別は教育を受ける機会でさえ、フェアではない現実を浮き上がらせた。

 「面接などと違い、公平に採点されると信じて努力してきたペーパーテストでさえ、女子に不利益が起きていたことは誰も想定していなかったと思う」

 上場企業の女性役員の割合3・7%、民間企業の女性部長職6・6%、高等教育での女性研究者15・7%-。男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数(2017年)によると、日本は調査対象144カ国の中で114位で、極めて低い水準にある。

 「特に経済や政治、知の生産分野で女性参画が低く、社会の意思決定の場に女性が極めて少ないのが日本の現状。世界はもっと速いスピードで女性参画が進んでおり、日本は世界の変化についていっていない」

 なぜ日本は女性参画が進まないのか。「男性の意識より、それを容認する女性の意識が変わらないことの方が大きい」と高橋学長はいう。「世界114位の日本社会が期待する女性像ではなく、規定外のさまざまな生き方があることや生涯賃金の格差についても学び、自分の可能性や限界をもっと高く設定した上で、人生選択をしてもらう必要がある」

 超少子高齢化で人材不足が深刻になる中、女性を含む多様な人材を積極的に活用する「ダイバーシティー」の考えを失えば、日本は活力ある社会を作っていくことができなくなると訴える。

 「日本は女性医師の数が非常に少ないがニーズは高い。建築業界でも女性目線の設計を求める声は多い。多様な人材や才能を生かす仕組みを作らないと、社会にとって大きな損失だ」

 それには「世の中の仕組みやルール作りの意思決定の場に女性を送り込むこと」が重要という。しかし、日本でそのポジションまで上り詰めるには、相当厳しい働き方が求められる。だからこそ、出産や育児で仕事を辞めなくていい勤務態勢を社会全体で考えていく必要があるという。

 一方、女子大で喫緊の課題となっているのが、「心は女性」というトランスジェンダーの学生受け入れだ。お茶の水女子大が20年度から受け入れを決定。津田塾大も立ち上げた検討会議で受け入れる方針を確認した。

 「今後、保護者や教職員、学生と話をして大学として決定していくが、一番の課題はハード面よりソフト面。LGBTの知識がない人たちの理解をどう取り付けるかが重要だ」

 理解を広げるためにも、近年盛んに取り上げられる「LGBT」という言葉を流行に終わらせず向き合い続けていかなければいけないという。

 「降って湧いた話ではなく、長く沈黙を強要され、権利が保障されない状況に置かれてきたLGBTの人たちの権利を回復する動きがようやく起きている。女性問題と同様、長い時間を掛けてここまで来たことを理解してもらうことが大事だ」

 多様性を認める流れが強まる中、トランスジェンダーに向き合うことは、女子大の意義を高めることにもつながると力説する。

 「女性参画が進んでいない日本だからこそ、社会を変革する女子を育てる女子大の意義が試される。ジェンダーアイデンティティー(性自認)を尊重し、ファッションや生き方も含めて自由を尊重する教育環境作りが必要で、それはすべての個人の自由と尊厳を尊重することにつながると思う」