鷹・柳田が迫る「2度目の.350超え」 複数回達成は過去10人だけの大記録

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

トップはイチローの4回、張本勲氏は3回

 シーズン終盤に入り、首位打者争いも形が見えてきた。パ・リーグではソフトバンクの柳田悠岐外野手が、435打数155安打、打率.356、2位日ハム近藤健介の.326に大差をつけて2回目の首位打者が近づいている。

 9月16日西武戦(メットライフドーム)の試合前練習中に、相手野手がフリー打撃で放った打球を左側頭部に受け、大事を取って試合を欠場。脳振とうの疑いがあったため、翌17日に「脳振とう特例措置の対象選手」として出場選手登録を外れていた。しかし、NPBによる脳振とう復帰プログラムをクリアして23日に8日ぶりの戦線復帰を果たし、関係者を安堵させた。

 柳田は2015年に502打数182安打、打率.363の高打率で、初の首位打者に輝いている。この年はトリプルスリーも記録、NPB記録のシーズン216安打を達成した秋山翔吾の.359を僅差で振り切って首位打者となった。柳田が現在のハイアベレージをシーズン終幕までキープすれば、2度目の打率.350超えとなる。

 規定打席に到達しての打率.350超えは、NPBが1シーズン制になった1939年以来、54人しか出ていない。きわめて難しい数字だ。そしてこれを複数回達成した選手はここまで10人しかいない。(1)は打率順位。

〇4回
イチロー
1994年(オリックス)
130試546打210安 率.385(1)

1996年(オリックス)
130試542打193安 率.356(1)

1998年(オリックス)
135試506打181安 率.358(1)

2000年(オリックス)
105試395打153安 率.387(1)

〇3回
張本勲
1970年(東映)
125試459打176安 率.383(1)

1972年(東映)
127試472打169安 率.358(1)

1976年(巨人)
130試513打182安 率.355(2)

落合、若松、ブーマー、バース、クロマティらも2回記録

〇2回
小鶴誠
1949年(大映)
129試501打181安 率.361(1)

1950年(松竹)
130試516打183安 率.355(2)

谷沢健一
1976年(中日)
127試496打176安 率.355(1)

1980年(中日)
120試425打157安 率.369(1)

若松勉
1977年(ヤクルト)
122試441打158安 率.358(1)

1980年(ヤクルト)
116試427打150安 率.351(2)

落合博満
1985年(ロッテ)
130試460打169安 率.367(1)

1986年(ロッテ)
123試417打150安 率.360(1)

新井宏昌
1979年(南海)
114試388打139安 率.358(2)

1987年(近鉄)
128試503打184安 率.366(1)

ブーマー
1984年(阪急)
128試482打171安 率.355(1)

1986年(阪急)
127試494打173安 率.350(2)

バース
1985年(阪神)
126試497打174安 率.350(1)

1986年(阪神)
126試453打176安 率.389(1)

クロマティ
1986年(巨人)
124試471打171安 率.363(2)

1989年(巨人)
124試439打166安 率.378(1)

 いずれも球史に名を残すそうそうたる大打者揃いだ。柳田もこの顔ぶれに加わろうとしている。

2度目の.360以上ならイチロー、落合、クロマティに続く4人目

 今季の柳田の打率は現時点で.356だが.360以上でフィニッシュすれば、複数回の打率.360超は、イチロー、落合博満、クロマティに続いて4人目となる。柳田が高打率をキープできるのは、選球眼が良く四球数が多い上に、足が速いことが大きい。そして、安打を広いエリアに打ち分ける「広角打法」も強みになっている。

 今季の盗塁は20。ソフトバンクの残り試合数は13で、中軸の柳田には難しいかもしれないが、チャンスがあればヤクルト山田哲人に次ぐ複数回のトリプルスリーも狙ってほしいものだ。

 柳田の通算成績は、2835打数909安打、打率.321。3~4年後には通算打率の目安である4000打数に到達するだろう。そうなれば、NPB通算打率1位の青木宣親(ヤクルト)の.329を脅かす存在になるのは間違いない。タイトル争いはライバルがいる方が数字が上がる。ライバル不在の「一人旅」になると、安心感からか成績が下落することが多い。

 しかし、2位ソフトバンクは、マジックは点灯しているが1位の西武を猛追している。ソフトバンクの中軸に座る柳田の安打は、勝利に結びつくことが多い。柳田には打率アップへ向けて、さらなる奮起を促したい。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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