【現場を歩く】〈東洋産業・本社工場〉リングロール製品のパイオニア 普通トラック用ベベルギヤで国内シェア7割

 東洋産業(本社・宮城県大衡村、社長・加藤雄二氏)の本社工場は仙台市より少し北にあり、大同特殊鋼グループの製造拠点としては日本最北端に位置する。同社は1955年創業の「リングロール製品のパイオニア」であり、小物~中物(外径115~650ミリ)のリングロール製品を幅広くそろえ、多種多様な異形品にも対応する。従業員数70人(2018年3月末)で17年度は売上高46億円、経常利益5億5千万円、年産1万9千トン。18年度上期はこれを上回るペースで推移している。(谷山 恵三)

 リングロール製品は特殊鋼棒鋼を素材に、切断→加熱→荒地鍛造→ローリング→サイジング→熱処理の工程を経て生み出される。(1)鋼材から製品までの歩留まりが向上する(2)圧延棒鋼のファイバーがそのままリング円周上に構成され製品強度が向上する(3)溝付き製品(ニアネットシェイプ)の製造が可能(4)型鍛造品などに比べて内・斜径とも偏肉が極めて小さい―などが特徴だ。

 東洋産業の主力製品は生産量の約7割を占める普通トラック用ベベルギヤで、国内シェアは約7割に達する。ベベルギヤはエンジンから伝達される動力を左右の車輪に振り分けるギヤであり、プロペラシャフト先端のピニオンギヤとデフケース内のベベルギヤをかみ合わせることにより回転方向を垂直に変換する。

 他の代表的な製品としては、マニュアルトランスミッションの動力伝達部品であるシンクロナイザスリーブがある。小物部品で重量が小さいため生産量に占める割合は1割に満たないが、個数は多い。この他にもベアリング製品などがあり、最近は建築用材料部品が増加傾向にある。

 主要製造ラインは新中型全自動ライン(外径200~650ミリ)、中型ライン(同150~500ミリ)、中小型全自動ライン(同150~300ミリ)、小型全自動ライン(同)115~250ミリ)の4基。17年度の生産個数18万8千個の内訳は新中型ライン3万個、中型ライン7千個、中小型ライン4万個、小型ライン11万個。新中型ラインは07年に約20億円を投じて稼働した新鋭ラインであり、生産量では約7割を占めている。

 小ロット対応も同社の特徴だ。中型ラインは例えば1品番50個といった小ロット対応に特化しているが、新中型ラインでも100~110種類程度の金型を使用している。この金型の製作やメンテナンスを内製しており、金型メンテナンスは12年ごろから内製化をはじめ、16年ごろから全量内製化している。生産増に伴い型替えや新規金型製作も増えており、この効率化も図りながら小ロット対応力を一段と強化する方針だ。

 現行中期計画(18~20年度)では売上高50億円、経常利益6億円を業績目標に掲げ、「モノ造り力の強化による安定収益の確保と新ビジネスの創出による販路拡大」(加藤社長)に取り組んでいる。主要施策の一つが加工深度の向上であり、加工スペースの拡大やレイアウト変更、設備の増設・更新など加工部門の合理化投資も実行し、客先加工工程の取り込みによる付加価値向上とユーザー囲い込みに努める。すでにNC旋盤4台や搬送ロボットで構成するベベルギヤ加工専用ラインで内径仕上げ加工を手掛けるほか、建築用材料部品の一部でも仕上げ加工まで行ってユーザーに納めている。機械加工まで行う加工品比率は現状4割近くに拡大しており、「将来は5割近くに伸ばしたいと考えており、現行中期でその下地を作りたい」(加藤社長)という。

 モノ造り力の強化では人材の確保と育成も重要なテーマだ。昨年から採用活動に再び注力しており、現場の人材育成と技能伝承を進めつつ、技術スタッフも現場から鍛え上げていく。

付加価値加工を拡大

 稼働負荷変動に対する生産弾力性改善や残業平準化を狙いに、多能職化による機動応援体制の強化にも乗り出している。2年前から圧延部門で機動班を設置し、今期から加工部門でも着手している。圧延部門の機動班は2人で加工部門の機動班は現状1人。機動班がラインの応援に入ることで、ライン要員の教育のための時間を作り出すことも可能になる。

 主力製品の安定供給を継続する一方、17年度のROS(売上高経常利益率)は12%で18年度上期はそれを上回っており、〝ROS12%以上の安定確保〟が実現可能な状況にあるだけに、技術スタッフを含めた人材確保と育成は最大の経営課題となっている。

 新規客先の拡大も重要な課題だ。例えば主力需要先である普通トラック分野では当面は国内向けが買い替えや震災復興、東京五輪特需もあり横ばい、海外向けはアセアン向けなどで回復基調が見込まれるが、リングロール製品の国内生産規模は、中長期で見れば顧客の海外調達、海外生産拡大などを背景に縮小傾向が予想される。ベベルギヤなど現有製品の安定供給体制を維持するためにも建築用材料部品のような新ビジネス創出が不可欠であり、将来を見越して新たに建機部品やロボット部品で試作、提案などを行っている。

© 株式会社鉄鋼新聞社