【新日鉄住金グループ企業の〝今〟43】〈日鉄住金スラグ製品〉ラグ製造・販売のプロ集団、組織営業強化で市場開拓

 日鉄住金スラグ製品は鉄鋼スラグ製品を全国で製造・販売するスラグの専門家集団だ。新日鉄住金の製鉄所でスラグを砕石状に再資源化し、道路の路盤材などとして販売する。スラグは製鉄過程で生じる副産物。鉄鋼生産とは切っても切れない関係にある。安定したスラグ製品の製造・販売を通じ、新日鉄住金の鉄鋼生産を陰ながら支えている。

 日鉄住金スラグ製品が設立されたのは2014年7月。新日鉄住金のスラグ販売子会社4社(日鉄住金鉱化、広鉱技建、製鉄鉱業大分、日鉄住金リコテック)が合併し、同時に日鉄住金テックスエンジが手掛けていたスラグ販売・製造作業、テツゲンのスラグ販売の各機能も承継し誕生した。北は北海道室蘭市から南は九州の大分市まで新日鉄住金の製鉄所内に8カ所の事業所を構える広範な販売体制が強みだ。

 新日鉄住金の製鉄所で生成するスラグは製銑工程と製鋼工程を合わせて年約2千万トン。日鉄住金スラグ製品はこのうち製鋼工程で生じる製鋼スラグを中心に約1千万トンを扱っている。道路の路盤材向けが主力製品だが、軟弱地盤改良用の「ジオタイザー」や林道舗装などに向く「カタマ」シリーズなど数量は限られるがきらりと光る機能製品もそろえている。

 重点課題は市場開拓だ。足元の販売は堅調で当面は現状の販売量を維持できる見通し。だが、木村和弘社長は「中長期的には販売環境が厳しくなる」と気を引き締める。

 足元の需要のけん引役は東日本大震災の復興関連や2020年の東京五輪に関する案件。しかし、これらの需要が一段落すると「関東、東北地方を中心に需要が減少する。需要減の谷は深い」(木村社長)

 中長期的に国内市場が漸減する懸念もある。国内の人口減少に伴い建設投資や道路の新設が減り、「30年度の道路用砕石市場が15年度比で約4割減る試算もある」(同)という。

 こうした厳しい見通しを踏まえ、現行中期経営計画(18~20年度)では新日鉄住金の機能分担会社としての機能強化を柱に据えた。「さらに販売力を鍛え、製造実力を磨き、スラグ製品の価値を高める」(同)方針だ。

 大きなテーマの一つが組織営業の強化。発足からこの4年間で各事業所の実力が着実に向上。今後は各事業所の「個」の力に加えて組織力も引き上げ、より高度な営業戦略でさらなる市場開拓を目指す。事業所間で営業情報やノウハウを共有するためのデータベースを整え、営業陣の人材育成にも力を入れる。

 製造面では人材育成システムやJK(自主管理)活動などを通じた技能教育に注力。技術力の底上げを目指す。

 スラグ製品を扱うにはその成分・品質の厳格な管理が欠かせない。販売面を含めたコンプライアンス(法令順守)の徹底にも引き続き力を注ぐ。

 新日鉄住金が将来にわたり安定した鉄鋼生産を続ける上でも「スラグの市場開拓は重要な課題」(新日鉄住金幹部)。鉄鋼生産を支え続けるスラグのリーディングカンパニーとして製・販両面でさらなる高みを目指す考えだ。(おわり)

企業概要

 ▽本社=東京都中央区

 ▽資本金=1億円(新日鉄住金の出資比率100%)

 ▽社長=木村和弘氏

 ▽売上高=352億円(18年3月期)

 ▽主力事業=鉄鋼スラグ製品の製造・販売、土木建築用資材の製造・販売、ダスト・スラッジを利用した製鉄用原料の製造・販売など

 ▽従業員=550人(18年3月末時点)

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