小田急線相模大野駅近くで地域の顔として親しまれてきた伊勢丹相模原店(相模原市南区)が2019年9月末に閉鎖されることが26日、明らかになった。市内唯一のデパートで、買い物や憩いの場として30年近く愛された。地域商業の核を担ってきただけに、市民や地元商店主からは惜しむ声が上がった。
「人生の節目にはいつも伊勢丹で買い物をしてきたのに…」。開店当初から利用してきた同区の鈴木肇さん(50)はため息をつく。結婚前の両家の顔合わせの場所となり、子どもの入学式や卒業式の後には家族そろって店を訪れた。
「どんな贈り物も伊勢丹の包み紙に入っているだけで気持ちを込めた物と感じてもらえる」と重宝がる。
1990年に開店し、翌年には同店を舞台にした高嶋政宏さん主演のテレビドラマ「デパート!夏物語」が放送され、全国に知られるようになった。
相模大野駅周辺商店会連合会の中田克己会長はその頃、自身の居酒屋を開店した。「かつて小さな店しかなかった相模大野にとって、街の顔だった。伊勢丹とともにこの街は大きくなってきた」と振り返る。
商店街と伊勢丹相模原店が協力して買い物用のポイントカードを作り、地域のイベントも一緒に開いてきた。だが、郊外に大型ショッピングセンターが開業するなど競合店が増え、来店客数は次第に減っていった。中田さんは「店員は皆さん、地域に協力的だった。本当に残念だ」と話す。閉鎖後のまちづくりについて「今は何も考えられない」と下を向いた。
加山俊夫相模原市長は「大変残念に感じている。閉店後については何も決定していないとのことだが、検討に当たっては、市と協議し、周辺のまちづくりへの影響に対し十分に配慮していただくよう要望した」とコメントした。