【工場ルポ】〈自動車整備用工具製造・販売、京都機械工具久御山工場〉高付加価値品を製造 レース使用の高級工具も

 自動車整備用工具などを製造販売する京都機械工具(本社・京都府久世郡久御山町、社長・宇城邦英氏、略KTC)は、より付加価値の高い工具製品の製造や、顧客満足度の向上に向けたさまざまな取り組みを実施している。このほど、線材製品協会は研修事業の一環として、KTCの久御山工場(京都府)、KTCものづくり技術館・匠工房、ネプロスミュージアムを見学、約20人が参加した。KTCが製造する車載用工具製品や、久御山工場の特徴などについてルポする。(綾部 翔悟)

一貫体制を敷く久御山工場

 久御山工場では、汎用品だけでなく、自動車整備用工具、医療用工具といったさまざまな製品を製造している。また、品質を究めるために一貫体制を敷いている。母材となる棒鋼を、材料切断・塑性加工・機械加工・熱処理・表面処理・組立・検査などを通してさまざまな工具を生み出している。生産品目は、ソケットレンチや駆動工具、トルクレンチなど多岐に渡る。

 久御山工場では、自社で金型を生産しており、コストダウンや独自性を追求している。切削といった機械加工では、コンピュータ制御で加工を行い、製品の特長に合わせたさまざまな加工を行っている。また、表面処理工場では、研磨用の石と研磨剤で製品の表面を磨き、手触りを良くするバレル研磨や、めっき処理により、防錆性に優れ、美しさにも注力している。そして、KTCの検査基準に基づき、出荷先に合わせて、完成品の機能や性能・寸法などをチェックし、製品の品質を確認して包装などを行っている。

 そのほか、久御山工場には、安全の感受性を高めるために、安全ラボを設け、安心・安全に対する意識の向上を促している。

ショールームで自社製品をPR

 ユーザーとのコミュニケーションを活性化させるため、本社敷地内につくられた情報受信拠点であるKTCものづくり技術館では、ラチェットハンドルなど同社が製造する約3千のアイテムを展示し、PRしている。また、同社製品の製造工程の写真や、工具体験スペースを設けているだけでなく、KTCオフィシャルグッズの販売店もある。KTCものづくり技術館に併設する、匠工房は工具ケースをモチーフにした外観で、自動車用工具といった修理サービスや、コールセンターなどを設けている。

 8月2日にオープンした「ネプロスミュージアム」には、同社が製造する「強さ、使いよさ、美しさを兼ね備えた究極の工具」を展示している。また、同ミュージアムは、京都の四季を感じさせる室内に、F1世界選手権などでも採用される自動車メンテナンス製品などを紹介した動画や、1500以上のアイテムを全方位に展示したブースなどもある。

最適なソリューションを提供

 KTCは「工具の新たな可能性を追求し、お客様が感動する憧れのブランドを創り、次世代への成長を加速する」を基本方針として、工具事業を核とした成長戦略を展開している。その一環で、データの解析と活用により、予防保全・安全作業に向けた取り組みなどを進める方針。

 同社のアイテム数は1万以上。工具製品は、公共交通やプラント、医療・福祉など幅広い分野で使用されており、さまざまな業界にユーザーを持つ。同社は顧客満足度のさらなる向上に向け、最適なソリューションを提供すべく、ツールだけでなく、ソフトウェアや運用も組み合わせて、作業現場が抱える悩みや課題の解決などにも注力している。そして、生産技術を強化し、ブランド力を高めながら、より一層付加価値の高い工具の製造などを目指している。

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