【スチールプランテックの新中期計画スタート、課題と展望】〈灘信之社長〉中国で電炉拡販、インドで営業体制強化 女性だけの業務改善チームも

 製鉄プラントメーカーのスチールプランテックは、2018年度からの新中期3カ年計画で、2020年度に受注高400億円、ROS5%を目標に掲げ走り出した。事業の現状と展望を、灘信之社長に聞いた。(村上 倫)

――事業の現状からお聞きしたい。

 「社長就任から1年半を迎えるが、成長のレールに乗ることができたという実感が出てきた。今年度の受注高350億円、売上高300億円は確実な状況となっており、掲げたビジョンや成長戦略がベストであったと確信に変わりつつある。この間、設備の製造委託を行うなど付き合いの深かった韓国のファブリケーターが倒産したが、すべての工程を間に合わせ、顧客へ迷惑をかけずに済んだ。安定して300億円を受注できれば収益を安定化し、再投資できる」

――どのような取り組みを進めてきましたか。

スチールプランテック・灘社長

 「社員が元気でなければ収益は上がらないという想いから働き方改革を推進してきた。その一環としてジェンダーのない企業文化創成に向けて女子力活躍プロジェクトを始動させた。10人の女性にRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の導入を〝ロボガール〟として推進してもらっている。教育融資制度や福利厚生の拡充なども図ってきたが、社内にも活気が生まれていると感じる。今夏にはサマータイム制も初試行した。今後は若手の活性化がさらに進むことを期待しており、若手主導で講師を招き、見識を広げる塾のようなものが生まれればと思っている」

 「また、業務プロセス改革に向けて、RPAのほかEMS(エンジニアリング・マネジメント・システム)として『プリマヴェーラ』を導入し、2020年度から始動するほか、ERP(統合型経営基幹システム)も導入し、来年4月に稼働予定となっている。労多くして収益の少ない〝FEVOプロジェクト〟の撲滅は永遠のテーマで、引き続き取り組んでいく」

――中期経営計画の進ちょくは。

 「中国では環境対応型高効率アーク炉『エコアーク』の拡販を進めているが、今年度、河北省の民営企業から初受注できた。現在、国営企業との交渉中でさらに勢いをつけていきたい。薄板商品のマーケット拡大にも注力しており、今年7月にベルギーのCMIと業務協力協定を結んだ。CMIの強力な海外営業力を軸にPLTCM用タンデム冷間連続圧延ラインの海外での拡販を図るとともに、酸洗ラインなどの国内更新需要を捕捉していきたい。インドでは、スチールプランテックインディアの社長の若返りを図るなど再構築を進めている。ビジネス拡大の余地は多く、組織や体制強化を進めていく。ベトナム事務所についても営業・技術サービス機能の見極めを行い、国内を含めた効率的な体制を考えていきたい」

――中期的な環境をどのように捉えていますか。

 「国内高炉メーカーの中計での投資計画は2兆円を超え、前中期に比べ1割以上増加するなど堅調な内需が見込まれる。老朽更新は自動車用ハイテン向けなど下工程についても行われ、更新に合わせて機能強化や高強度化なども図るとみている。こうした需要を確実に捕捉したい。効率的な営業展開を行うため、圧延設計技術の統合を目指し冷間、熱間、条鋼圧延の組織見直しも進めているほか、国内外の営業についても融合を図っている」

――認識する課題は。

 「韓国ファブの倒産で新たな海外パートナーファブの発掘を進める必要がある。中国やインドの技術力を持ったファブの開拓を可及的速やかに行っていくほか、CMIのファブも活用していきたい。また、働き方改革も一層進めていく。中堅・若手社員との中央協議会の実施に加え、コーチング研修、マネジメント研修などの充実を図り、上司の後ろ姿を見て若手が育つような職場にしていきたい。〝ロボガール〟についても、女性だけの独立した業務改善チームを実現しようと考えている」

 「設計についてもアドバンスド設計の導入とブラッシュアップを図っていく。技術開発はAI電炉やAIレベラなどのスマートプロダクツ、連続生産可能なマルチマテリアル鋼板製造プロセスなどを展開したい。エンジニアリング会社の原点として、技術立社の精神をもう一度燃え上がらせることが必要だ。そういう意味で、株主の川崎重工が中山製鋼所へ納入した〝コンパクトホット〟は熱延のハイテン材の生産に最適なレガシー技術だと考えており、海外向けを中心に技術展開してみたいという想いを持っている。この3年間は海外の地固めの時期。最終的には〝メイド・オブ・ニッポン〟の技術の結集・進化により海外でのプレゼンスも確立し、欧州トップ企業とアジアやインドで伍(ご)していける事業戦力をつけたい」

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