【世界大学ランキング】と「アベノミクス」の相関

 英国の専門教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)が26日、今年の「世界大学ランキング」を発表した。アジアでは中国の清華大が最高で22位、次いでシンガポール国立大、北京大、香港大と続き、東京大が42位(アジア5位)だった。日本ではトップ200位に入ったのは東大と京都大(65位)の2校のみ。このランキングは2004年から、研究の影響力(論文の引用頻度)、教員1人当たりの学生数など13指標のデータを総合判断している。こうした外部評価に一喜一憂するのも、いかがなものかという見方もあるが、人々の関心が高いのも事実。安倍晋三首相もかつて成長戦略の目標として「トップ100に日本の大学10校ランクインさせる!」とぶち上げたことがある。これまでの変遷をたどってみた。(共同通信=柴田友明)

世界大学ランキング 左は2018年 右は2017年

 「成長戦略」の目玉だったが…

 「今後10年で世界大学ランキングトップ100に10校ランクインさせる」。2013年、安倍首相は大学改革を成長戦略と位置づけ、講演などで何度も強調してきた。13年6月の講演では「私の経済政策の本丸は、3本目の矢である成長戦略だ。規制改革こそ成長戦略の1丁目1番地。国家戦略特区を創設して…」と語り、10年で10校のランク入りをとなえた。

 第2次安倍政権の初期、「規制改革」「成長戦略」という言葉の響きがまだ新鮮だったことが思い出される。この年の10月発表されたランキングでは東大が前年より順位を4つ上げ、23位でアジア首位の座を守った。京大52位、東京工業大125位、大阪大144位、東北大150位で、上位200校に日本勢は5校入っていた。もしかしたら実現可能かもしれない…首相の言動に期待感を持った人は少なくなかった。しかし、5年後の今回は、上位100校どころか上位200校に東大、京大の2校しか入っていないことをみれば、成長戦略の目標達成は厳しそうだ。

2013年3月4日、「クールジャパン戦略」の推進会議であいさつする安倍首相。右は稲田朋美氏=4日午後、首相官邸

 すでに13年7月20日の時点で、竹中平蔵氏が東洋経済オンラインのインタビューで安倍首相の10校ランクインの目標について「それにはそうとう努力がいります。私も大学の中にいて思うのは、大学のシステムの中にはマネジメントという概念がないことです」と話している。最初から無理だったかもしれないという思いにとらわれる。

 日本勢、過去最多103校ランクインの「意味」

 一方で、今回のTHEの発表では「朗報」もある。86カ国の1250超の大学が対象となった発表で、日本は過去最多の103校がランクイン、米国の172校に次ぐ数の大学が入った。「日本はかつてないほどの存在感を示している。確かな進歩を遂げた」と、THEはコメントしている。

 対象の母数が大きくなれば、ランクインする大学の数が増えることは当然と言えば当然だ。しかし、日本各地の大学で「頑張っている」大学が多いことの指標でもあろう。国公立大が多いが、私立では藤田保健衛生大、順天堂大、慶応大、日本医科大、早稲田大、愛知医科大などの大学が含まれる。全体的に医学部などがある総合大が評価されている印象がある。THEの指標に合致すべく、教育政策が実際に進められたかどうか、検証は必要だ。

 今後の見通しについては、人口減や高齢化などのため「日本の大学の存続が脅かされる可能性がある」と、THEが冷静にそう指摘している。

 2018年のTHEの発表によると、東大(42位)は教育環境、産業収入は評価され、京大(65位)は教授法など評価された。上位300位内には大阪大、東北大、東京工業大、350位内に名古屋大が、500位以内にさらに7校がランクインしている。

 参考は世界大学ランキング。この記事では、THEが発表した年を基準にして、その年の大学ランキングという表記にしています。

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