ニッサン・リーフを比較試乗。通常グレードとニスモグレードのおススメポイントは/市販車試乗レポート

 近年、EV(電気自動車)は市販車に加えフォーミュラEなどモータースポーツのシーンでも活躍するようになり、気になっている方も多いはず。そこで、今回はニッサンのEVであるリーフの通常グレードと、そのスポーツグレードであるニスモグレードの2台を比較試乗した。

 100%電気で走るEVとしては世界一の販売台数を誇るリーフ。その2代目は、2010年に登場した初代モデルから7年ぶりにフルモデルチェンジを遂げ、2017年10月から発売が開始された。その2代目をベースにニスモがチューニングしたリーフ・ニスモは2018年7月末に登場した。今回試乗したのは、通常グレードの最上位モデルであるリーフGとリーフ・ニスモの2台だ。

ニッサン・リーフG(左)とニッサン・リーフ・ニスモ(右)

■初代から一新されたスポーティな外観

 まずは車両の外観と室内からチェック。2代目リーフは、近年のニッサン車のイメージであるVモーショングリルや、ブーメランのような形状のヘッドランプ・リヤランプが採用され、初代よりもシャープでスポーティーな印象を受ける。全長は4480mm、全幅は1790mm、全高は1540mm、最低地上高は150mmで、初代と比べると全長は35mm、全幅は20mmアップしており、地上高は10mm下がっている。

ニッサン・リーフG
ニッサン・リーフG(フロント)
ニッサン・リーフG(サイド)
ニッサン・リーフG(リヤ)

 室内は広く、乗り降りも快適。ラゲッジスペースも大容量でキャリーケース3つは余裕で積むことができるだろう。インテリアやナビ、メーターパネル、操作パネルも一般の乗用車とほぼ変わらないので、EV初心者でも機能を直観的に把握することができた。ただ、EVと聞くとメーターパネルをすべてディスプレイ化するといった“未来感”をイメージしてしまう方も多いはず。このあたりには、“遊び心”があってもいいかもしれない。

ニッサン・リーフGの車内(フロント)
メーターパネルにはディスプレイとタコメーターが備わっている。
ニッサン・リーフGのステアリング回り
シフトレバーはパソコンのマウスのような形をしている。
ルームミラーはカメラの映像で映し出される。通常のルームミラーにすることも可能。
バッテリーは床下に配置しているためラゲッジスペースは広い。

 ニスモグレードには、スーパーGTで培ってきたノウハウをフィードバックした専用設計のエアロパーツが装備された。フロントバンパーには、ニスモロードカーシリーズで特徴的なレイヤード・ダブル・ウイングやバンパー両サイドL字形状が採用され、通常グレードよりもさらにスポーティーな外観となっている。また、ニスモグレード専用のサスペンション、電動型制御ブレーキ、18インチアルミホールなどの装備がふんだんに盛り込まれ、タイヤはコンチネンタルのスポーツタイプを履く。

ニッサン・リーフ・ニスモ
ニッサン・リーフ・ニスモ(フロント)
ニッサン・リーフ・ニスモ(サイド)
ニッサン・リーフ・ニスモ(リヤ)

 室内も専用デザインとなっており、本革・アルカンターラ巻のステアリングや、パワースイッチ、エアコン吹き出し口にあしらわれたレッドライン、カーボン調のインストパネルがニスモらしさを演出する。

 ちなみに、ニスモグレードの全幅は通常グレードと変わらないが、全長は30mmアップの4510mm、全高は10mmアップの1550mm。最低地上高は15mmアップの165mmとなっている。

ニッサン・リーフ・ニスモの車内(フロント)
ニッサン・リーフ・ニスモのステアリング回り
パワースイッチも専用のレッドフィニッシャーとなっている。
エアコン吹き出し口にあしらわれた専用のレッドフィニッシャー
ニスモのロゴ入りカーペットはメーカーオプション
ニッサン・リーフ・ニスモ専用のカーボン調インストパネル

■3リッター並みのトルクが生み出す驚きの加速

 2代目リーフの駆動方式は前輪駆動で初代と変わらないが、パワーユニットは大幅に改良が加えられている。

 バッテリー容量はサイズを変えずに30kWhから40kWhに増大。航続距離はカタログ値で400kmを記録している。最大出力は110kW(150馬力)、最大トルクは320N・m(32.6kgf・m)を発揮。トルクに関しては、3リッターのエンジンを搭載するフェアレディZやスカイラインと同レベルになる。

 その走りを味わうべく、いよいよ公道へ。まずは通常グレードのリーフを試乗してみる。スターターを押してモーターを始動するが車内はかなり静かだ。シフトレバーをドライブに入れて走り出しても音はほとんど聞こえない。加速時に発せられるモーターの音はどこか未来的で心地よい。エンジン音がないと寂しいという方も多くいると思うが、モーターの加速音も意外とありだと感じる。

 3リッターエンジン並みというトルクのおかげで発進や加速もストレスがない。アクセルのタイムラグもほとんどなく、ステアリングは非常に軽いため運転は快適だ。アクセルペダルを深く踏み込めば、体を押さえつけられるようなGを感じる。ガソリンエンジン車よりもきびきび走れるのではと感じるほど機動性は十分だ。

ニッサン・リーフGのシート
ニッサン・リーフGの後部座席
ニッサン・リーフGの車内(フロント)
ニッサン・リーフGのインストパネル
カーペットは二層構造。コチラはメーカーオプションとなる。
ニッサン・リーフGは17インチのアルミホイールを履く。

 静粛性もかなり高いが、今まではエンジン音で隠れていた音がEVになると気になってくる。道が荒いところではタイヤから出るロードノイズが強調され、高速道路で速度が高い状態になると空気を切る音が目立つようになった。ただ、このあたりは運転中にラジオや音楽をかける人は気にならないだろう。

 話題の『e-Pedal(eペダル)』も試してみた。eペダルは、発進、加減速、停止までをアクセルペダルひとつで行えるもの。アクセルペダルを戻したときには一般的なブレーキングと同等の減速感(最大2.0G)を発生させ、ブレーキランプも点灯する。

 eペダルの感想としては、使いこなすには慣れが必要だと感じた。アクセルペダルを戻すとブレーキがかかる仕組みのため、ガソリン車を運転している感覚でアクセルペダルを放すと急ブレーキをしたかのような減速となってしまうからだ。筆者も、eペダルは初めての感覚だったため戸惑ったが、慣れてくるとアクセルペダルだけでクルマを操作できるため、渋滞で流れが悪くなった場面でも楽に運転することができた。

■ニスモグレードは峠道などで本領発揮か

 続いてニスモグレードに乗り込む。見た目はかなりスポーティだが、走りの部分ではどうだろうか。

 正直に言うと、一般公道で通常グレードとの違いをそこまで感じ取ることは難しいかもしれない。違いは確かにあるが、それは本当に少しの違いだった。

 例えばアクセルペダルのレスポンス。ニスモグレードのコンピューターはニスモ専用のチューニングが施されており、加速の立ち上がり速度は通常グレードの約2倍となっている。ただ、実際に走ると加速レスポンスは通常グレードよりも上がっていることをわずかに感じる程度だった。ガソリン車で例えると、ニスモのアクセルレスポンスは低いギヤでエンジンを回しているようなフィーリングだ。

 一方、車体の応答性がよく、挙動も把握しやすくなった印象だ。これはニスモ専用パワーステアリングとグリップの高いスポーツタイヤのおかげかもしれない。

 こういった違いは峠道やサーキットなどでトラクションを求められる場面で効いて来るはず。パワー特性の違いから、走行距離に影響する電費にも変化があるかもしれない。

ニッサン・リーフ・ニスモのフロントにはニスモロードカーシリーズで特徴的なレイヤード・ダブル・ウイングとバンパー両サイドL字形状が採用されている。
サイドとリヤにもニスモ専用のエアロパーツが装備されている。
ニッサン・リーフ・ニスモのディフューザー
エンブレムの横にはニスモのロゴがあしらわれる。

■気になる航続距離と充電時間

 ガソリン車よりきびきび走ると感じたリーフだが、やはり気になったのは充電と航続距離。航続距離はカタログ値で400kmを記録しており、エアコンなどをつけた状態で走行した際は、メーター表示で航続可能距離は約250kmとあった。超長距離のドライブでは少し不安が生まれかもしれないが、例えば首都圏内のドライブであれば往復しても航続距離の心配はないだろう。

フロントの充電ポート。急速充電用と普通充電用が備わっている。

 バッテリーチャージに関しては80%まで電気を蓄えるのに急速充電で約40分となっている。充電時間は短縮はされているものの、旅行中にバッテリーをフルチャージするにはそれなりの時間を要するだろう。

 だが、急速充電スポットは全国で7108基と年々増加しており、高速道路でも設備は充実してきている。気軽に乗るという意味では、まだまだハードルが高いと感じるが、今後はさらに発展していくことは間違いないはずだ。

 100%電気で走るニッサン・リーフの通常グレードとニスモグレードを比較したが、どちらも予想以上にきびきびと走ると感じた。EVはガソリン車が生み出す音や鼓動のようなものがなくなっているものの、走りの面ではダイレクトに伝わるアクセルレスポンスや力強い加速が新しい楽しさや感覚をもたらしてくれた。

 価格の面では、リーフGが399万600円(税込)でニスモは403万2,720円(税込)と決して手の届かないものではない。また、通常グレードとニスモグレードの価格差は約5万円。一般的なガソリン車であれば、スポーツ寄りのチューニングをしたモデルはスタンダードよりも20万~50万円ほど高くなるが、リーフに関しては10万円を切っている。両グレードとも走りはガソリン車とそん色なく、この価格差でニスモ専用装備を手に入れられる点は悩みどころとなりそうだ。

 心残りなのが、走りの違いをしっかりと感じることができなかったことだ。機会があれば、2台を峠道やサーキットへ持ち込み、走りの違いをさらに検証したい。

運転席のシートは体をしっかりと支えてくれ、長距離の運転でも疲れにくい印象。
助手席の座り心地も良い。
後部座席はコンパクトカーと同じくらいの広さだが、窮屈感は感じなかった。

■ニッサン・リーフ主要諸元

リーフ G ニスモ

車名型式 ニッサン ZAA-ZE1 ニッサン ZAA-ZE1

寸法 全長 / 4480mm
全幅 / 1790mm
全高 / 1540mm
室内寸法 長 ※1 / 2030mm
室内寸法 幅 ※1 / 1455mm
室内寸法 高 ※1 / 1185mm
ホイールベース / 2700mm
トレッド 前 / 1530mm
トレッド 後 / 1545mm
最低地上高 ※1 / 150mm 全長 / 4510mm
全幅 / 1790mm
全高 / 1550mm
室内寸法 長 ※1 / 2030mm
室内寸法 幅 ※1 / 1455mm
室内寸法 高 ※1 / 1185mm
ホイールベース / 2700mm
トレッド 前 / 1530mm
トレッド 後 / 1545mm
最低地上高 ※1 / 165mm

重量・定員 車両重量 / 1520kg
乗車定員 / 5名
車両総重量 / 1795kg 車両重量 / 1520kg
乗車定員 / 5名
車両総重量 / 1795kg

性能 最小回転半径 / 5.4m
交流電力量消費率(JC08モード 国土交通省審査値) / 120Wh/km
一充電走行距離(JC08モード 国土交通省審査値) / 400km 最小回転半径 / 5.4m
交流電力量消費率(JC08モード 国土交通省審査値) / 137Wh/km
一充電走行距離(JC08モード 国土交通省審査値) / 350km

駆動用バッテリー 種類 / リチウムイオン電池
総電圧 / 350V
総電力量 / 40kWh 種類 / リチウムイオン電池
総電圧 / 350V
総電力量 / 40kWh

原動機 型式 / EM57
定格出力 / 85kW
最高出力 / 110kW(150PS)/3283~9795rpm
最大トルク / 320N・m(32.6kgf・m)/0~3283rpm 型式 / EM57
定格出力 / 85kW
最高出力 / 110kW(150PS)/3283~9795rpm
最大トルク / 320N・m(32.6kgf・m)/0~3283rpm

動力伝達装置 最終減速比 / 8.193 最終減速比 / 8.193

諸装置 駆動方式 / 前輪駆動
ステアリングギヤ形式 / ラック&ピニオン式
サスペンション前 / 独立懸架ストラット式
サスペンション後 / トーションビーム式
主ブレーキ 前 / ベンチレーテッドディスク式
主ブレーキ 後 / ベンチレーテッドディスク式
主ブレーキ 回生協調ブレーキ / 電動型制御ブレーキ
タイヤ 前・後 / 215/50R17 91V 駆動方式 / 前輪駆動
ステアリングギヤ形式 / ラック&ピニオン式
サスペンション 前 / 独立懸架ストラット式
サスペンション 後 / トーションビーム式
主ブレーキ 前 / ベンチレーテッドディスク式
主ブレーキ 後 / ベンチレーテッドディスク式
主ブレーキ 回生協調ブレーキ / 電動型制御ブレーキ
タイヤ 前・後 / 225/45R18 95Y

※1 ニッサン測定値。

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