トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツどっちが買い!?徹底比較

3ナンバー5ドアハッチバックの2台を徹底比較

2018年6月26日に発売されたトヨタ カローラスポーツは、ミドルサイズの5ドアハッチバックで、全幅がワイドな3ナンバー車になる。海外市場を重視して開発され、プラットフォームはプリウスと共通化された。走行性能に力を入れ、DCM(通信機能)を全車に標準装着したことも特徴になる。

エンジンは直列4気筒の1.2リッターターボと、1.8リッターをベースにしたハイブリッドを用意する。駆動方式は前輪駆動の2WDが基本で、ターボには4WDも設定した。

なおカローラスポーツは、実質的にオーリスの後継車種だ。次期型のカローラアクシオとカローラフィールダーは、カローラスポーツをベースに開発されており、3ナンバー車になる。

そして、カローラスポーツのライバル車がスバル インプレッサスポーツだ。スバルの主力車種で、カローラスポーツと同じく3ナンバーサイズの5ドアハッチバックに位置付けられる。現行型は2016年10月に発売された。

エンジンは水平対向4気筒の1.6リッターと2リッターを用意して、すべてのグレードに前輪駆動の2WDと4WDがある。

そこで今回は、カローラスポーツとインプレッサスポーツを比べてみる。

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-S アイサイト・2016年10月発売)

全長×全幅×全高は、カローラスポーツが4375×1790×1460mm(2WD)だ。インプレッサスポーツは4460×1775×1480mmだから、カローラスポーツに比べると85mm長く、15mm狭く、20mm高い。それでもほぼ同じ大きさだ。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はカローラスポーツが2640mm、インプレッサスポーツが2670mmとされ、後者の数値は全長と併せて長くなっている。

外観は見た人の好みで評価が分かれるが、フロントマスクやボディサイドの形状は、インプレッサスポーツが一般的、カローラスポーツは個性的だ。

視界はインプレッサスポーツが勝る。前側とドライバーの側方は両車とも同程度で、3ナンバー車では優れた部類に入るが、斜め後方はインプレッサスポーツが見やすい。カローラスポーツはサイドウインドウの下端が後ろに向けて大きめに持ち上がり、ボディ後端のピラー(柱)も太めだ。真後ろの見え方も含めて後方視界はインプレッサスポーツが勝る。

最小回転半径はカローラスポーツが5.1~5.3m、インプレッサスポーツは5.3mになる。

*勝者:インプレッサスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|内装デザイン/質感/操作性/視認性比較

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18
トヨタ カローラスポーツ 1.2リッターターボ(ガソリン) ボディカラー:シアンメタリック/タイヤサイズ:205/55R16

両車ともに視認性と操作性は良好だ。エアコンのスイッチも、比較的高い位置に装着されて扱いやすい。メーターも見やすくデザインされた。

ソフトパッドも使われ、インパネを見ると、両車ともに助手席の前側で斜めにステッチ(縫い目)を入れている。造形的な新鮮味は、カローラスポーツが少し強い。インプレッサスポーツはオーソドックスに高品質を追求する。

*勝者:カローラスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|前後席の居住性比較

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-S アイサイト・2016年10月発売)

前席は両車ともにサポート性が良い。肩の周辺までしっかりと支える。その上で比べると、カローラスポーツは体をしっかりとホールドするスポーティな座り心地だ。インプレッサスポーツには柔軟性が伴い、リラックス感覚を重視する。この違いは、車両の性格を反映させたものでもある。

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-S アイサイト・2016年10月発売)

後席は両車ともに床と座面の間隔が不足気味で、腰の落ち込む座り方になる。この傾向はカローラスポーツが少し強く、大腿部が座面から離れるのを抑えるため、座面の前側を持ち上げた。欧州車に多く見られる手法だが、やや体が拘束された印象を受ける。

身長170cmの大人4名が乗車した時の膝先空間は、カローラスポーツは握りコブシ1つ半、インプレッサスポーツは握りコブシ2つ半になる。現行プリウスやカローラスポーツのプラットフォームは、従来型に比べると前席の取り付け位置を30mm後退させたから、カローラスポーツも後席の足元空間が狭まった。カローラスポーツをファミリーカーとして使う場合は、後席の居住性を確認したい。

*勝者:インプレッサスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|動力性能&エンジンフィーリング比較

トヨタ カローラスポーツ 1.2リッターターボ(ガソリン) ボディカラー:シアンメタリック/タイヤサイズ:205/55R16
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-S アイサイト・2016年10月発売)

カローラスポーツの1.2リッターターボエンジンは、高回転域の吹け上がりはさほど機敏ではないが、実用回転域の駆動力が高いために運転がしやすい。ターボを装着しないノーマルエンジンに当てはめると、1.8リッタークラスの動力性能を発揮する。

1.8リッターエンジンをベースにしたハイブリッドは、加速感が滑らかでノイズも小さい。発進時や低速の走りではエンジンを始動させないことも多く、静かな運転感覚を楽しめる。ただしカローラスポーツのスポーティな性格を考えると、もう少し動力性能を高めて欲しい。

一方でインプレッサスポーツは、1.6リッターと2リッターのノーマルエンジンを搭載する。1.6リッターは実用回転域を重視した扱いやすいエンジンだが、車両重量が1300kgのボディに組み合わせると、動力性能が足りない。

2リッターエンジンは直噴式とあって駆動力が高く、パワフルとはいえないが、登坂路でも力不足をあまり感じない。従って2リッターエンジンを選びたい。

カローラスポーツとインプレッサスポーツでは、エンジンのタイプが異なるから一概には比べられない。それでもJC08モード燃費が同程度になるカローラスポーツの1.2リッターターボと、インプレッサスポーツの1.6リッターを比べると、前者の動力性能が高い。ハイブリッドを選べる選択肢の広さも、カローラスポーツのメリットだ。

*勝者:カローラスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|走行安定性比較

トヨタ カローラスポーツ 1.2リッターターボ(ガソリン) ボディカラー:シアンメタリック/タイヤサイズ:205/55R16

カローラスポーツの操舵感は、機敏に反応するわけではないが、ハンドルの操舵角に対して車両の向きを忠実に変える。ステアリングの支持剛性が高く、正確な動きを見せる。

峠道などを走っても、車両を内側へ回り込ませやすい。動きの鈍さを感じにくく、スポーティな運転感覚に仕上げた。

このように曲がりやすさを追求すると、後輪の接地性が下がりやすいが、カローラスポーツはしっかりと踏ん張る。後輪の横滑りを誘発した時の動きも穏やかだから、安心感が伴って操る楽しさも味わえる。バランス良く仕上げた。

走行安定性と適度な曲がりやすさの両立、いい換えれば高い安全性と運転する楽しさのバランスは、今では世界の自動車メーカーが目指す共通化された方向性となった。国籍、メーカー、ブランドを問わず、それぞれの表現方法で同じ方向に向かっている。

従ってインプレッサスポーツにも同様のことが当てはまるが、カローラスポーツに比べると操舵感が少し穏やかだ。峠道などのカーブは自然に曲がるが、後輪の接地性をカローラスポーツ以上に優先させた。言い換えればカローラスポーツは、曲がりやすさと安定性のバランスを緻密に図っている。

*勝者:カローラスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|乗り心地比較

スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-S アイサイト・2016年10月発売)

カローラスポーツの乗り心地は、全般的に硬めだ。粗さは抑えたが、時速40km前後では路上の細かなデコボコを伝えやすい。G・Zにはショックアブソーバーの減衰力を調節できるAVSがオプション設定され(オプション価格は10万8000円)、コンフォートモードを選ぶと、乗り心地が角の丸い印象になる。それでも硬さが残る。

その点でインプレッサスポーツは、乗り心地が比較的柔軟だ。18インチタイヤ装着車は少し硬く感じるが、17インチであればリラックスできる。

*勝者:インプレッサスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|安全&快適装備比較

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-L アイサイト・2016年10月発売)

緊急自動ブレーキは、カローラスポーツがミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーとして使う。スバルは2個のカメラだ。自動車事故対策機構による予防安全性能アセスメントのテストは、カローラスポーツでは行われていないが、同じシステムを使うC-HRやプリウスの試験結果から考えれば満足できるだろう。インプレッサスポーツは試験が行われ、同様に優れた成績を残している。

両車ともにドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して警報する機能なども用意する。

異なるのはカローラスポーツが通信機能を標準装着したことだ。目的地の検索サービスなどはユーザーによってニーズが分かれるが、ヘルプネットは安全装備のひとつに含められる。エアバッグが作動するとオペレーターが対応して、消防や警察への手配も行う。車両のデータから、重症度の情報を判断して救急に送る機能もある。

*勝者:カローラスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|燃費性能とエコカー減税比較

トヨタ カローラスポーツ 1.2リッターターボ(ガソリン) ボディカラー:シアンメタリック/タイヤサイズ:205/55R16

JC08モード燃費を2WDで見ると、カローラスポーツの1.2リッターターボは18~19.6km/L、ハイブリッドは30~34.2km/Lだ。インプレッサスポーツは1.6リッターが18.2km/L、2リッターは16~17km/Lとなる。

カローラスポーツのターボとインプレッサスポーツの1.6リッターは、同程度の燃費性能だ(動力性能はカローラスポーツが勝る)。カローラスポーツのハイブリッドは当然ながら燃費が優れる。

エコカー減税に該当するのはカローラスポーツのハイブリッドのみ(自動車取得税と同重量税は免税)。ほかはすべて減税対象外だ。

*勝者:カローラスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|グレード構成と価格の割安感比較

トヨタ カローラスポーツ 1.2リッターターボ(ガソリン) ボディカラー:シアンメタリック/タイヤサイズ:205/55R16
スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-L アイサイト・2016年10月発売)

価格の近い売れ筋グレードとしては、カローラスポーツG(225万7200円)と、インプレッサスポーツ2.0i-Lアイサイト(218万1600円)がある。比較しやすいようにインプレッサスポーツも2WDを取り上げる。

動力性能はインプレッサに余裕があり、装備ではカローラスポーツにLEDヘッドランプやDCM(通信機能)が備わる。インプレッサスポーツは歩行者エアバッグの装着が特徴だ。動力性能の違いと価格差の7万円を考えると、インプレッサスポーツが少し割安になる。

*勝者:インプレッサスポーツ

トヨタ カローラスポーツ VS スバル インプレッサスポーツ|総合評価

スバル インプレッサ(インプレッサスポーツ2.0i-L アイサイト・2016年10月発売)

カローラスポーツは適度に機敏な操舵感と優れた安定性を両立させ、スポーティな雰囲気を味わえる。これに比べてインプレッサスポーツは、視界の優れたボディ、開放感の伴う内装デザイン、後席のゆったりした足元空間など、リラックス感覚を重視した。

つまり同じミドルサイズのハッチバックでありながら、車両の性格が異なる。カローラスポーツは、峠道を走るのが好きなユーザーなどに適するだろう。ターボには6速MT(マニュアルトランスミッション)も設定した。

インプレッサスポーツは、ファミリーユースを含めて、幅広いユーザーが使いやすい。

この2車種は用途や好みに応じて選び分ければ良いが、判断に迷った時にはインプレッサスポーツを推奨する。優れた視界や快適な後席は、日常的な安全性と使い勝手を向上させるからだ。

トヨタ 新型カローラスポーツ 1.8リッターハイブリッド(HV) ボディカラー:シルバーメタリック/タイヤサイズ:225/40R18

カローラスポーツには、運転の楽しさという特徴があるが、インプレッサスポーツに比べると選択の決め手に欠ける。ただしカローラスポーツに装着される通信機能のヘルプネットは、安全性を向上させる観点から注目される。

ヘルプネット自体は以前から用意されていたが、カローラスポーツは全車に標準装着した。ヘルプネットにも通信ネットワークの届かない地域があり、そういった見つかりにくい場所で生じた事故こそヘルプネットが必要ともいえるが、安心感を大幅に高めることは確かだ。同様の機能をインプレッサスポーツも含めて、幅広い車種に設定して欲しい。メーカー間の業務提携も、このような場面で発揮されるべきだ。

*総合勝者:インプレッサスポーツ

[Text:渡辺陽一郎/Photo:小林岳夫&SUBARU]

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