核兵器開発、賛成?反対?  山里中「対話型授業」公開 長崎市教委平和教育再編

 長崎市教委が本年度から本格化させている平和教育の再編に関し、指定モデル校の市立山里中(野口耕校長、472人)で28日、核兵器をテーマにした対話型授業が公開された。中学3年生32人が兵器開発の当事者の立場で賛否を討論。各小中学校の教諭がそれを基に、授業の在り方を考えた。
 「核兵器が平和につながるわけではない」「戦争を終わらせるためなら」。戦時中、政府から兵器開発の協力を要請された科学者の実例を自分の身に置き換え、生徒一人一人が賛否両方の立場で考えた。核兵器自体を否定する反対意見が上がる一方、戦争終結や科学者としての将来を理由に賛成する声もあった。
 授業を受けた紀(き)達也さん(15)は「両方の立場で考えていくうちに、正解と思っていた自分の考えが、必ずしもそうではないことが分かった」と振り返った。
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 今回の平和教育の再編では、他人の意見を尊重しながら主体的に考えを発信できる児童生徒を育成するため、被爆体験講話と授業に対話を取り入れている。
 市教委は8月末、市立小中学校全108校を調査し現状を把握した。事前学習・実践・事後学習の3段階を踏む「対話型被爆体験講話」は、実施と部分的実施が計92校で、一定の成果があった。「対話型授業」は実施が34校、2学期に実施予定が27校。「全教職員にまだ浸透していない」などを理由に、本年度実施しないとした学校が47校あり、4割を超えた。
 市教委は再編の定着に向け、本年度に指定モデル校の全5校で対話型授業を公開。他校の教諭にも見てもらいながら周知を図り、意見交換を通じて対話型教育の在り方を模索している。
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 山里中の授業後、再編担当関係者と視察した小中学校教諭の計約40人が授業研究会を実施。「異なる立場で発言する時に本音が出ていた」「生徒が自分に向き合う時間が増えていた」などの感想が上がった。他人の意見を聞いた上で最終的な考えや感想を共有する機会があれば討論の幅が広がる、とする意見もあった。
 授業を担当した山下慶子教諭(45)も「他人の意見を踏まえ、さらに討論を進めていくことで、新たな考え方や提案が生まれる」と話した。

対話型授業で意見交換をする生徒たち=長崎市立山里中

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