野党の存在

 あっと驚いた1年前の出来事が、ずっと前の話に思える。「もっと希望を」と小池百合子・東京都知事が「希望の党」を設立したのが昨年9月25日。3日後に衆院解散した▲その頃の小池氏はずいぶん勢いづいていたが、安保法制などへの考えが違う人を「排除します」と言い切ったあたりから雲行きが怪しくなる。10月に入り「立憲民主党」が結成されると、衆院選ではこちらの方が勢いづいて、野党第1党に躍進した▲先日、福山哲郎幹事長は東京での講演でこう振り返った。有権者は、小選挙区では他党を選んだとしても「比例代表では立憲民主党と書く。そんな選択をしてくれた」▲たやすく他の野党とくみせず、小選挙区に候補を乱立しなくても、有権者はきちんとこっちを向いてくれた、と。今後も野党で「安易な合従連衡はしない」という▲ただ、野党同士でずっと知らん顔もできまい。巨大与党と向き合うならば、野党の枠組みは? 先々、政権交代を目指すとすれば、その道筋は? 共有すべき問いは山とある▲改革に必要なものは何?と聞かれて英国の故サッチャー元首相は答えた。「政権交代が可能な、よい野党の存在です」。野党の与える緊張感あってこそ、という戒めだろう。「安倍1強」の続く日本でも、野党の存在感がきっと、もっと要る。(徹)

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