きょうから10月

 「この中には私の時間が詰まっています」-誇らしげな表情がとても印象的だった。長崎市立高島中3年の高城夏海さんが学校の先生と交換日記を始めたのは1年ほど前のこと。8月に県の「少年の主張大会」で話を聞いた▲自分の気持ちを口に出すのが苦手で、いろんなことを心にため込んでしまう。だったら日記は? 国語の先生の勧めで日記を書こうと決意し、普段から相談にのってくれる養護の先生にパートナーを頼んだ。「一人で続ける自信がなかったので」。正直な告白がいい▲彼女は、読み手がいることの効用にやがて気づく。楽しい話は楽しさが伝わるように、腹が立った日は怒った理由が分かるように。言葉選びが丁寧になった▲何度も読み返すページがあるそうだ。定期考査への不安をつづった日、先生の返事は「思うような点が取れなくても一生懸命頑張った結果なら大丈夫。もし『さぼっちゃった』と思うなら、次は一生懸命を目指してみたら」。日記の伴走者は、主旋律に絶妙な伴奏を添えてくれた▲文字にして残せば、後で嫌な出来事を思い出してしまうかもしれない。でも「今の自分は、その出来事を乗り越えた新しい自分」。日記は成長の証し-と高城さん▲きょうから10月。売り場に並んだ来年用の手帳や日記帳が気になる時季だ。(智)

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