ボアイのリトグラフ発見 出島町の庭見せで初公開 フランスの画家・版画家 川原慶賀が模写

 江戸時代に活躍した長崎・出島の出入(でいり)絵師で、日本の風景や動植物などを描いた川原慶賀に影響を及ぼしたフランスの画家、版画家のルイ・レオポルド・ボアイ(1761~1845年)のリトグラフ「絵画愛好者たち」(縦29・7センチ、横21センチ)が見つかった。今年の長崎くんちの踊町の一つ、出島町の3日の庭見せで初公開される。長崎大名誉教授で慶賀に詳しい兼重護氏(82)は「日本で見たことがなく珍しい」としている。
 慶賀はこの作品を参考にし、「蘭人絵画鑑賞図」と題した作品を制作したとみられる。ボアイの作品は、額縁に入った絵をのぞき込む女性1人、男性5人のさまざまな表情が戯画的に淡彩で描かれている。一方、慶賀はこの構図をほぼ忠実に模写しているが、濃厚な色彩で描いている。
 兼重氏の著書「シーボルトと町絵師慶賀」(長崎新聞新書)などによると、ボアイは版画家として石版画であるリトグラフを100点以上制作。「絵画愛好者たち」は1825年、「蘭人絵画鑑賞図」は20年代後半に制作されたという。慶賀はほかにも、ボアイの作品「しかめ面」に影響され、西欧の版画の顔面描写の特異性に着目した作品も描いており、慶賀が鋭い感覚と技術を持ち合わせていたことを示しているという。
 リトグラフは、出島を30年以上研究している長崎市歴史民俗資料館(同市平野町)の学芸員、永松実氏(67)が今年4月、東京都内の古書店で発見し、購入した。
 庭見せでは、このリトグラフを、出島町とゆかりのある慶賀の関連資料として出島の乙名詰所(おとなつめしょ)に飾る。ほかにも出島町の演(だ)し物「阿蘭陀(おらんだ)船」のモデルとなった図説や、出島と西欧の貿易品など約20点を歴史資料として併せて展示する予定。永松氏は「実際に見て、出島の歴史に思いをはせてほしい」と来場を呼び掛けている。

ボアイのリトグラフ「絵画愛好者たち」(永松実氏提供)

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