高大接続改革(4)予備校が挑む 新入試対応で先行

生徒の興味引き出し、記述力育む

大学入試センター試験は2020年度から大学入学共通テストに変わる。入試情報をいち早く収集、分析して教材研究を重ねる予備校も、新しい試験に挑む高校1年生を中心に指導法が様変わりしつつある。

大手予備校河合塾の高校1年生向けの募集パンフレットには、新大学入試を意識した言葉が並んでいた。

「映像を見るだけというような、一方通行の授業では(学力を)身につけることはできません」「『わかる』だけでなく『できる』ようになるための、新しい授業を展開します」

福岡校(福岡市中央区)の宮崎敏彦校舎長(46)は「中心だった対面集合型の授業は、2000年ごろから徐々に変わってきています」と話す。知識や技能の習得、思考力・判断力・表現力、主体性を持って学ぶ態度の3要素で構成される学力をどう育てるか。そんな視点での模索を続ける。

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実際の授業をのぞいてみた。主に進学校の生徒が通い、難関大や医学部などを目指すコースの高校1年英語の講座。休憩を挟んで2時間40分の長丁場だ。コミック本の電子化をテーマにした会話文のリスニングや長文読解が進んでいく。

英文に即して日本語でまとめさせる問題では「新課程入試を意識した問題だね」と、講師の堤英喜さん(38)が22人の生徒に語り掛ける。「皆さんが受験する頃には国語が苦手だと英語も難しい時代がやってくると意識してください。あらゆる教科で国語の記述力が問われます」

新入試に向け、河合塾は講師陣が授業で使うテキストを大幅に改訂した。以前は文法問題の解説に授業全体の3分の1程度を費やしており、リスニングは盛り込んでいなかった。構成も不定詞や仮定法など文法を大きなくくりにしていたが、生徒が興味を持つようなテーマや問題提起に沿って学ぶ形になったという。

テキストを読み進めると「答えをあるだけ選べ」など、従来の傾向とは異なる問題が見られた。和文英訳と英文和訳を軸にした出題を長く続けてきた京都大も近年、会話文の中で英文を補う設問を出題。4技能のうち話す力を意識しているとみられ、難関大の入試も変わりつつある。

授業の終盤は、4こま漫画を題材にした自由英作文だった。1こま目に「とても楽しそうだね、スーザン、どこに行くの(本文は英語)」と記載され、2~4こま目の吹き出しを絵に合うように埋めていく。堤さんが「前に出てお芝居をやっていいって人はいませんか」と問い掛けると、生徒の手が次々と挙がった。

受講した福岡大大濠高1年の藤村亮太さん(16)は「4技能が問われるようになれば、ちゃんと話す力も必要になる。学校でもペアで会話をする機会はあり、特に緊張はない」と語った。堤さんも、生徒たちが以前より会話に対する抵抗感は減っていると実感する。

この英作文問題も新たな入試形態を念頭に置いているのだろうか。調べてみると、1997年度の東京大入試が元になっていた。20年以上前の問題が“現役”なのを見ると、求められる学力はさほど変わらないようにも思えてくる。宮崎校舎長は「4技能が問われるとか、変化を意識してしまうが、何を学ぶかは基本的に変わらない」と語った。

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入試問題の研究を続けながら教材を開発、指導に生かし、検証することを繰り返してきた予備校。高校も予備校が実施する全国模試や傾向分析などを現場で活用している。

河合塾は2015年から、高校教師向けに「高大接続改革シンポジウム」を各地で開催。今年は6月に開き、昨年実施された共通テスト試行調査の内容を分析し、今後どのような学力が求められるかを説明し、好評を博した。学校側の要望に応じて、研修や授業で英語や小論文などを担当する講師を派遣することも少なくないという。

「予備校は変化を先取りして蓄積し、高校は多様な学びの場という役割がある。互いに補い合うことで、受験に臨む生徒たちの目標が達成できればいい」。宮崎校舎長はそう語った。

大学入学共通テストの英語大学入学共通テストの英語は、「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能が問われることになる。受験生は大学入試センターが認定したTOEICや英検、GTECなどの民間検定試験を受験する年度の4~12月に計2回まで受けられる。2023年度まではセンターによる従来のような試験と併存し、24年度以降は民間試験に一本化される見通し。

=2018/09/30付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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