10年ぶりパ・リーグVの西武 今振り返る度重なる戦力流出と世代交代の歴史

西武・菊池雄星【写真:荒川祐史】

Vから遠ざかった10年間、相次いで主力選手が退団した

 開幕から一度も首位を譲ることなく、文句なしの強さで10年ぶり22度目のパ・リーグ制覇を果たした西武。2008年以来の栄冠となったが、優勝から遠ざかっていた10年間は、チームは相次ぐ主力選手の流出という逆風を受け続けてきた。苦闘の10年を経て頂点に立った今だからこそ、過去10年間の戦力流出の歴史を振り返ってみよう。

 まずは2010年シーズンのオフ、当時正捕手を務めていた細川亨がFAで同一リーグのソフトバンクへと移籍。このときは炭谷銀仁朗が期待通りに後釜に収まったものの、その後も毎年のように主力選手の流出は続いていく。2011年には、4度の2桁勝利を挙げるなど左のエース格として活躍した帆足和幸がソフトバンクへ、中継ぎ転向を機に大車輪の働きを見せたミンチェ(許銘傑)氏がオリックスへと、揃ってFAでパ・リーグ球団へ移籍。前年にベストナインに輝いたホセ・フェルナンデス氏も退団し、かつて在籍した楽天へ復帰した。

 2012年にも、日本球界屈指の大型遊撃手として鳴らし、球団の顔でもあった中島裕之(現・宏之)選手がメジャーリーグ挑戦のためにチームを退団。以降、西武は源田壮亮が入団する2017年まで、遊撃手を固定することができなかった。

 10年間の中でも、2013年は、悪い意味でターニングポイントとなった1年だった。2009年に沢村賞に輝くなど、エースとして長くチームを支えた涌井秀章と、4年連続で盗塁王を獲得し、不動の二塁手として活躍した片岡治大がFAでチームを離れることに。また、最高出塁率を受賞し、シーズン40盗塁も決めたヘルマンがオリックス、58試合で防御率1.87と抜群の安定感を見せたサファテがソフトバンクへと移籍した。

 そのオリックスと福岡ソフトバンクが翌2014年に激しい優勝争いを演じた事実が、埼玉西武にとっての損失の大きさを物語る。そして、それまでは4年連続でAクラスに入っていた西武は2014から3シーズンにわたってBクラスに沈む低迷期へと突入していった。

炭谷や浅村、菊池といった面々が、主力流出を機にチームの核に成長

 その後も主力の退団は毎年のように続く。2015年には片岡の人的保障として巨人から移籍してきた脇谷亮太がわずか2年でFA宣言して古巣に復帰。2016年には、エースの岸孝之がFAで楽天へと移籍し、2017年オフには先発・中継ぎ・抑えのすべてを経験しチームに貢献した牧田和久がメジャー挑戦と、2度の2桁勝利を挙げた野上亮磨が巨人へ移籍と、揃って退団した。

 ただ、西武はこういった度重なる戦力の流出がありながらも、そのたびに新たな若手が台頭し、その穴を埋めてきた。細川の穴を埋めて正捕手へと成長した炭谷を筆頭に、2013年オフに主力が大量流出した際も、複数の選手たちが台頭を見せた。投手陣では増田達至と高橋朋己が重要なポジションを任されて一本立ちし、片岡選手が抜けた二塁には浅村が入り、後年のさらなる飛躍へとつなげていった。ヘルマンが抜けた外国人野手枠では、メヒアが圧倒的な長打力を発揮し、前任者とは違った形でその穴を埋めた。

 また、岸が退団した翌年には菊池雄星が完全に独り立ちし、最多勝と最優秀防御率の二冠に輝いている。中島の穴こそなかなか埋めることができずに苦しんだものの、2017年の源田の入団で、長年の悩みは解決された。堅実な打撃と2年連続で盗塁王争いを繰り広げている俊足はもちろんだが、特筆すべきは12球団トップと言ってもいい守備力。チームの弱点だった遊撃をあっという間に強みへと変化させた。

 ドラフト戦略と生え抜きの成長によって新陳代謝を機能させた西武だが、久々の優勝を飾った今オフにも戦力の流出は続きそうだ。エースの菊池がメジャー挑戦の意思を明らかにしている。さらに浅村もFA権を取得している。投打の柱ともいえる両選手が退団となれば、大きな痛手となるだろう。

 これまでと同様に、現有戦力の成長によって主力離脱の穴埋めをできるかどうかが、来季以降の西武を占う上で重要なファクターとなってくる。黄金時代到来を狙う獅子軍団は、今後も逆風を跳ね返すような鮮やかな世代交代を見せ続けてくれるだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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