国民保護訓練の現実味

 外部からの武力攻撃や大規模テロを想定して、県が年1回国民保護訓練を実施していることを、県民はどれくらい意識しているだろうか。その内容をどれくらい知っているだろうか▲今年は11月に対馬市で開催する。イベント会場が国際テロ組織に爆破されて緊急対処事態となり、上島の住民をヘリや船舶を使って下島へ避難させるという設定だ▲この訓練の根拠となる国民保護法は、国民の生命や財産を保護することを目的とする。昨年は他国からのミサイル着弾を想定した訓練が雲仙市で行われた▲だが昨年の訓練では、発射を伝えるサイレンから短時間の“着弾”に住民避難を間に合わせることができず、有効性に疑問の声が出た。そもそも特に基地施設があるわけでもない雲仙市を狙ってミサイルが撃ち込まれるだろうか、という声もあったが▲今年の会場となる対馬は、複雑に入り組んだ地形に小集落が散在する大型離島。上島には1万2千人が住む。その一部でテロが現実に起こったとして、広範囲の人々が一斉に遠距離避難するのはどれだけ大変か▲もしそうなれば、自宅や職場をいったん離れた住民は、いつ元の生活に戻れるのか不安を抱えて過ごすことになるだろう。国民保護訓練が想定しているのはそういう深刻な事態だ。起こってほしくない「万一」である。(泉)

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