「まるで夜逃げ」 五島産業汽船運休

 五島産業汽船が全航路を運休した2日、船が発着する長崎県内各地のターミナルでは利用者が驚きや戸惑いの表情を見せた。窓口には「会社都合につき、しばらくの間運休します」と紙が張り出されただけ。一方的な通知に「ちゃんと説明してほしい」「まるで夜逃げだ」と憤りの声が相次いだ。

 新上五島町の有川港。娘を見舞いに佐世保の病院に行こうと早朝から来た男性(82)は「なぜこんなことに」と語気を強めた。長崎市から日帰り出張で訪れた男性会社員(30)は「朝から運休を知り、慌てて九州商船の便に替えた。月1回は上五島に行くので困る」と迷惑そうに話した。

 長崎港も窓口は終日閉鎖されたまま。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産、崎津集落(熊本県天草市)を訪ねる五島産業汽船の関連会社のツアーを夫婦で申し込んでいた長崎市内の男性(66)は「二人分の代金を1万7600円も振り込んだのに電話もつながらない」。新上五島町に帰ろうとしていた男性(40)は「九州商船の航路もあるが、発着する港が自宅から遠いので不便。払い戻しもなく、夜逃げされたみたい」とこぼした。

 佐世保市の鯨瀬ターミナル。フェリーの自動販売機の飲料入れ替えに来たメーカーの男性(37)は「事前に連絡はなかった」とぼうぜん。五島市の福江港では無人の営業所の電話がひっきりなしに鳴り響いた。訪ねてきたハローワーク職員は「従業員の今後の処遇を確認したかったが…」と立ち尽くした。

 突然解雇を告げられた従業員の一人は取材に「会社から何も言うなと言われている」とだけ答えた。

五島産業汽船の船の姿がない桟橋=2日午後1時、長崎市元船町、長崎港ターミナル

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