【素材技術で新市場に挑む シリーズ「EV化」企業編(1)】〈日立金属〉多彩な商品群で攻勢 磁石、銅合金など積極投資

 日立金属はEV需要対応で多様性に富む製品群をそろえる。モータ、インバータ、コンバータ関連ではネオジム磁石、フェライト磁石、軟磁性材料、エナメル線などがあり、バッテリー関連ではリチウムイオン電池用集電箔、高性能化・軽量化が求められる駆動・足回り部品ではブレーキハーネス、アルミホイール、鋳物部品などを持つ。クリーンエンジンに不可欠な現有製品で高シェアを握りつつ、新領域の研究開発も含めてEV化の波に乗ろうとしている。

 モータ・発電機関連では高回転化による小型・高出力化という技術潮流に対して、磁石の小型・高性能化、エナメル線の高耐熱化・高耐電圧化、モータコアのコアロス低減で呼応する。国内外で磁石の増産投資を継続し、2025年度に磁性材料カンパニーの売上高を16年度比倍増の2千億円に拡大する計画だ。

 マテリアルフローの最適化は三徳の子会社化で大きく進展した。国内で磁石合金生産やリサイクルを含めた一貫プロセスによる磁石生産の効率化、中国で磁石合金から磁石までの生産体制を構築する。

 エナメル線では新連続鋳造圧延ラインを今春稼働し、モータの小型軽量化や生産性向上に貢献できる新銅合金「HiFC」の本格量産体制を整えた。

 インバータ・コンバータ関連では、次世代パワー半導体による高効率化の進展に対してアモルファス金属、ファインメット、メタルパウダー、ソフトフェライトなどをそろえる。半導体の高周波化・大電流化、トランス・インダクタの高性能化・低ロス化といった要求特性に合わせ材料ポートフォリオを拡充する。

 バッテリー部材としては高強度と低電気抵抗を兼ね備える負極集電箔があり、子会社のクラッド材ライン増強も進行中。

 全社リソース活用による新製品・新市場開拓の取り組みの一環で、次世代自動車部材プロジェクト(NAC)もスタートしている。

 自動車業界に100年に一度といわれる大変革の波が押し寄せようとしている。新エネルギー車(NEV)の普及・拡大では、金属素材業界も新たな対応を迫られる。「自動車EV化シリーズ」第2弾では、「自動車新時代」に向けた鉄鋼・非鉄金属企業の取り組みをレポートする。

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