いきなりの運航停止

 「島にお住まいですか?」「あ、いいえ…」。電話で船の便の予約を入れると、そう聞かれてちょっと面食らった。そうか、法律ができて、離島在住だと運賃割引になる。だから聞かれたんだ-と、やや間を置いて合点する▲つい半月ほど前、長崎港から新上五島町の鯛ノ浦港へと、五島産業汽船の高速船で渡った。島では、景色に教会に、ただ見とれるばかりだった▲五島列島の潜伏キリシタン関連遺産を訪れる人がぐっと増えたと聞く。国境離島新法により、島民は海を渡る運賃が下がり、島外との行き来がしやすくなったとも聞く。そうした中で、いきなり、五島産業汽船が全航路の運航を停止した▲五島列島と長崎市、佐世保市を三つの定期航路で結んでいた。九州商船も定期便を運航しているが、全体の便数は減るし、佐世保-五島(福江)を結ぶ便は九州商船にはない。観光に影響が出る、不便になる、と不安が広がっている▲船の修理費などがかさみ、経営悪化したらしい。航路運営の難しさを感じさせるが、そうだとしても、このいきなりの運休や廃止はどうしたことか。航路を要する人も、急に解雇された元従業員も、全くやりきれまい▲新上五島町などは再開に向け、最善を尽くすという。海の安全運航のみならず、一日も早い“安定”運航が望まれる。(徹)

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