号砲 県議選 16選挙区の構図③ 諫早市区(定数4) 現職堅実 挑む元職

 「今年は、漏れなく来とる」。9月下旬、諫早市内であったイベント。現職県議4人が並んで座る姿を横目に、参加者の一人がささやいた。司会者が紹介すると、4人はそれぞれ手を振ってアピール。会場で住民に駆け寄ったり、酒を酌み交わしたりする姿からは、日ごろから堅実に地域回りしているという自信と余裕をうかがわせた。
 4年前の前回-。同市区は“無風”状態から一転、告示2カ月半前に民主(当時)の元参院議員、大久保潔重が“参戦”し、激戦区になった経緯がある。無所属で再出発を訴えた大久保は、1万4千票超を集めてトップ当選。現職だった4人のうち、八江利春、中村和弥、橋村松太郎の自民3人が議席を守る一方、大久保と支持層の一部が重なった民主の山口初實が苦杯をなめた。
 大久保は8年ぶりの県議復帰後2年余り、県議会では一人会派で活動したが、昨年、八江と中村が属する「自民党・県民会議」に合流。「(県議会)最大会派の人脈を生かし、活動の幅が広がった」と手応えを語る。今回も無所属で出馬を予定し、地盤の旧市内を中心に動く。
 9期目を目指す八江は昨年7月、2回目の県議会議長に就任。8カ月余りで退いたが、九州新幹線長崎ルートの全線フル規格化を早くから唱え、議会内外との調整、陳情に奔走。存在感を増した。
 小長井町、高来町を地盤とする中村は昨年、県連政調会長に就任。衆院選や県知事選では、取りまとめに貢献した。来春へ自身の組織も引き締め、「これまで以上に動き回る」と意気込む。
 県議会会派では「自民」に所属し、八江、中村とは一線を画す橋村は、旧森山町長時代の地盤のほか、旧北高地域にも支持者が多い。県内への移住促進策など提言型の活動で定評があり、「貢献できることはまだまだある」と意欲を見せる。
 「住民の声を県政に届ける役割がある」。前回次点の山口は、自民系会派の議席独占に危機感を抱き、県政復帰を目指す。昨年の衆院選で希望の党から出馬し落選。今年初め、古巣の民進(当時)に復党した後、国民民主に移った。党公認と連合長崎の推薦を得ており、関係団体回りを加速させる。
 民進出身者がいる立憲民主は、山口を支援する方向。前回1人が出馬した共産は擁立に向けて人選に入る。ほかに、政治経験のある40代男性会社員を推す声があり、構図は流動的だ。
 =文中敬称略=

◎立候補予定者
 
八江 利春 78 自現(8)
橋村松太郎 71 自現(5)
中村 和弥 58 自現(3)
大久保潔重 52 無現(3)
山口 初實 70 国元(2)

 【お断り】立候補予定者名簿の政党は衆院勢力順(自民=自、立民=立、国民=国、公明=公、共産=共、社民=社、無所属=無)。政党内は現職-元職-新人の順で、当選回数(丸数字)ごとに五十音順。所属は公認申請予定を含む。

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