金属行人(10月4日付)

 鉄鋼の過剰能力問題を協議する多国間の枠組み「グローバル・フォーラム(GFSEC)」が9月の閣僚会合で、これまでの取り組み成果を報告書にまとめた▼今年の閣僚会合はもともと6月に開催する予定だったが、米国の中国に対する制裁関税発動と重なったことで、開催がこの時期にずれ込んだ▼能力削減の取り組みについて報告書は、一定の成果は出ているがまだ過剰能力は大きいと指摘。参加国共同の取り組みを継続する必要があると強調した▼能力削減の成果については、素案作成の段階で参加国間で意見が割れた。論点となったのは中国の削減努力に対する評価だ。身を切るほどの改革に取り組んだのだから積極評価すべきとする意見と、過剰能力の震源地として削減努力は当然とする意見が出て、素案づくりは難航した▼結局「中国の取り組みは鉄鋼業全体の能力削減に貢献している」との文言を入れることで落ち着いた。多様な意見が交錯する多国間協議の難しさを改めて印象づけた▼報告書が指摘するように能力削減の取り組みは道半ばである。もとより、この枠組みは各国の自主的取り組みを促すもので、拘束力を持たない。それだけに重要なのは枠組みを継続することだ。12月に議長国に就く日本のリーダーシップが期待される。

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