三菱マテリアル、「銀焼成膜付DBA基板」開発 中高温大気下でも活用可能

 三菱マテリアルは3日、自動車や工場などの排熱回収技術として今後採用が期待されている熱電発電モジュール用途として、中高温(300~450度)の大気中でも使用可能な銀焼成膜付DBA基板を開発したと発表した。銀の厚膜回路上に熱電変換素子を直接接合することでモジュールの内部抵抗の上昇を抑え、高温の排熱にも耐える高耐久化を実現した。

 自動車の排熱を再利用する場合に使用する熱電発電モジュールは、銅回路や銀回路をセラミックス上に形成した基板を使用したモジュールの上下に温度差を与えることで発電する。300~400度という高温の排熱の中で熱電発電モジュールを使用する場合、大気中における回路金属の酸化や構成部材である基板や熱電変換素子のクラックによる破損が発生することがあり、熱電発電モジュールの内部抵抗の増加で出力低下が課題となっていた。

 こうした課題に対し、DBA基板(アルミ回路付き高放熱セラミックス絶縁基板)のアルミニウム回路上に強い接合力をもつ厚膜化した銀焼成膜を形成するように改良。高温下での耐酸化性を有する銀による低抵抗回路と、DBA基板のアルミニウムによる応力緩和性を両立した新製品の開発に成功した。

 新製品は応力緩和性の高いDBA基板の上に銀による厚膜回路を形成することにより、モジュールの内部抵抗の上昇の原因となる回路金属の酸化の抑制、および構成部材の接合性低下やクラックによる破損を抑制し、高温環境下での連続使用における発電量の減少を微小化した。

 また銀の厚膜回路は、最表面に純銀を使用しており、半導体素子の電極表面が銀や金の場合は、接合材が不要な固相拡散により直接接合をすることが可能。銀の厚膜回路上に熱電変換素子を直接接合することでモジュールの内部抵抗の上昇を抑えることにより、450度という高温の排熱の中での高耐久化を実現した。こうした銀厚膜回路を使用した新製品とその半導体素子への直接接合により、熱電発電モジュールの高温に対する信頼性の大幅な改善に寄与していく。

 なお今回の開発成果は、18年7月にフランスで開催された熱電変換技術に関する国際会議ですでに報告。海外からも高い関心を寄せられている。

© 株式会社鉄鋼新聞社