【女子プロ野球】育成チームのレイア、埼玉アストライアに善戦「女子野球界の未来は明るい」

埼玉アストライア戦で好投した レイア・水流麻夏【写真提供:女子プロ野球機構】

「ジャパンカップ」出場権をかけて対戦、レイアは「女子プロ野球界への登竜門」

 10月下旬に開幕する女子硬式野球の頂上決戦『第8回女子野球ジャパンカップ』に出場する残り1枠をかけ、埼玉アストライアとレイアが4日に対戦した。

 レイアは、20歳以下の高卒入団選手(原則)のみで編成される球団。次代を担う一流選手の育成を目的にした球団で、2015年春に「レイア」として宮城県仙台市に誕生。2017年から京都府城陽市に拠点を移している。

 レイアはヴィクトリアシリーズに出場することはできず、年間の公式戦は2回(ティアラカップとジャパンカップ出場決定戦)。選手全員が専用の寮で生活し、アマチュアチームとの交流試合や練習と試合運営を重ねる。また、年に3回、鹿児島県の鹿屋体育大学と連携し、スキルアップのため各個人の動作解析を図る合宿を行っている。

 2年間、選手としての技術を磨きながら、1人の人間として成長し、トップチームへ昇格させる独自の育成プログラム。いわば、『女子プロ野球界への登竜門』である。現にレイアから昇格し、トップチームで活躍する選手を数多く輩出する実績を持っている。

 そんなレイアの先発は、今夏のW杯で前人未到の6連覇を果たした侍ジャパン女子代表の水流麻夏。対するアストライアは、ヴィクトリアシリーズでは不振に苦しんだエース磯崎由加里が登板した。

 初回から両投手の変化球中心の投球が冴え、2回裏までスコアに0が並ぶ。先制したのはアストライア。3回に9番・佐々木希がサードゴロエラーで出塁。盗塁と進塁打で1死三塁とし、打席には2番・加藤優。「ボールに合わせず強いスイングをする。三塁走者の佐々木選手は足があるから、最低でも外野フライで1点取れる。磯崎さんがいいピッチングをしていたから何としても先制したかった」。外角高めの直球を捉え、センターへの犠牲フライで三塁走者が生還し、ノーヒットで1点を先取した。

 試合を有利に進めていくため重要な先制点。しかし、先制打を放った加藤の顔に、いつもの爽やかな笑みはなかった。

「こういう試合は何があるか分からない。最後まで油断できない」

 アストライアは、8月5日のティアラカップ香川大会でレイアに9回サヨナラ負けを喫していた。相手が育成チームとはいえ、決して気を緩めることはできない。トップチームの選手にとっても、レイアは侮れない存在になっているのだ。加藤の先制打後、アストライア打線はレイア投手陣の前にヒット2本無得点に押さえ込まれた。

 反撃したいレイアだったが、磯崎の緩急自在の投球の前に自分たちのスイングを崩され、内野ゴロの山を築かされる。何度流れを持っていかれそうになったか……。それでも諦めない。「トップチームにとにかく勝ちたい。ジャパンカップに出場したい」。その一心でミスもカバーし合った。

指揮官も納得「レイアらしい野球ができた」

 そして、好機が訪れる。6回2死走者なし、打席には9番・石黒貴美子。依然アストライア磯崎の前に1人の走者も出せずにいたレイア打線だったが、ストレートのフォアボールを選び、この試合初めての走者が出塁する。続くは1番・白石美優。追い込まれてから捉えた打球は右中間を破るツーベースヒット。この試合初めてのヒットとなった。

 試合終盤に訪れた1打逆転の大チャンス。ここで迎えるは、攻守でチームを盛り立ててきた2番・戎嶋美有(えびすじま みゅう)。1ボール1ストライクからの3球目、高めの直球を捉えた。鋭い打球がセンター方向へ飛んだが、無情にもピッチャー磯崎の正面へこぼれる。ボールを拾い丁寧にファーストへ送球。この回無失点に終わった。

 最終回の攻撃、先頭の3番・中嶋南美が目の醒めるようなライト前ヒットを放ち出塁。しかし後続が倒れ、2死三塁となった。打席には先発投手としてチームに流れを呼び込んだ6番・水流。最後の望みをかけ、捉えた打球はアストライアのセカンド川端友紀の正面へ飛び、ゲームセット。あと一歩だった。この瞬間、埼玉アストライアの1-0での勝利、ジャパンカップ出場が決定した。

 試合後、レイアの松村豊司監督は「半年間の練習の成果が出たいい試合だった。ミスは出たがみんなでカバーし合う。レイアらしい野球ができた。また来年に向けて、個々のレベルアップができる指導をしていく」と語り、先発の水流は「下克上を目指して試合に挑んだ。敗れてしまったが私自身のリズムで投げられた。球速アップを目指してこの冬で一回り成長したい」と駆けつけたファンへ自身の成長を誓った。

 先発の水流は5回2/3を1安打1失点と好投した。6回2死から登板した2番手今井巴菜も1回1/3を投げ、1安打無失点で抑えた。打撃もトップチームの投手を相手にしても振り負けない力強いスイングだった。先制を許した犠牲フライのシーンも無駄のない中継で、間一髪のプレイを見せた。入団して半年間、慣れない環境や厳しい練習を乗り越え、逞しくなった姿を多くのファンの前で魅せた。

 試合後、太田幸司スーパーバイザーは「今日の主役はレイアの選手たち。彼女たちの頑張りを見て、女子野球界の未来は明るいと安心した。今日の試合を自信に変えてトップチームへ上がった時、リーグを代表する選手たちに成長してほしい」とレイア選手の健闘を称えた。

 下積みを経た選手たちの成長を楽しめることも女子プロ野球の大きな魅力のひとつ。今後の彼女たちの成長に期待したい。(Full-Count編集部)

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