五島産業汽船が破産へ 社長謝罪、負債は21億円

 五島産業汽船(長崎県新上五島町)が離島航路を2日から突然運休、事業停止状態となっている問題で、野口順治社長(54)が4日、県庁で会見し、来週にも破産手続きに入ることを明らかにした。負債総額は関連会社を含め判明分で21億円。野口社長は島民ら利用者に「突然のことで多大な迷惑をお掛けし、本当に申し訳ない」と謝罪。公設民営で運航していた長崎-上五島(鯛ノ浦)航路の早期再開を新上五島町が目指していることには「最大限協力したい」と述べた。
 代理人の石橋龍太郎弁護士によると、判明している負債総額は同社が17億3千万円、発券業務などを行う関連会社のジィ・エス・ケーが3億7千万円。関連会社を含めた従業員計68人は2日までにほぼ全員を解雇した。
 野口社長によると、2015年に参入した佐世保-上五島(有川)航路が、当初から赤字で約4億円の累積損失を出すなど経営を圧迫。船の修繕費などもかさみ、8月と今月1日に不渡りを出して銀行取引が停止となった。2回目の不渡りについては「債権者に猶予を求めたが延期できなかった」と述べた。
 従業員の9月分の賃金、30日前までに解雇予告をしなかったことに伴う解雇予告手当などが未払いで、国の立て替え払い制度を使う準備をしている。運賃などを支払い済みの利用者に対しては全額を払い戻す意向だが、対象人数や総額は未確定という。
 今後について野口社長は同町に協力する意向を示し、「事業譲渡や港の自社ビルの使用などできる限りサポートしたい」と話した。
 同社は1990年設立。18年4月期決算は売上高が11億6千万円、経常損益は1億1800万円の赤字だった。長崎-上五島、佐世保-上五島のほか、佐世保-五島(福江)を運航し、長崎-熊本県天草でも高速船を試験運航していたが、いずれも1日までに休止、廃止を九州運輸局に届け出ていた。

会見で謝罪する五島産業汽船の野口社長(右)=県庁

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