金属行人(10月5日付)

 鉄鋼事業を取り巻く環境は「今の状況を悪いと言ったら罰が当たる」と言われる。メーカーがすべての注文に応えられないくらいの需要があり、安定供給・安定生産が大きな課題。高級鋼や高付加価値鋼、つまり製造負荷が高い製品比率が増える中で、今のような高稼働を長く続けたことはこれまでにない。もともとがフル稼働継続の計画のため、ひとたび設備トラブルが起きると完全に取り戻すことはできにくい▼そうした環境下で各社の業績はいかに? 連結決算ではまずまずのレベル感とも言えるが「好環境を考えれば不十分。他業界と比べれば不十分。海外メーカーと比べれば不十分」といったところか。特に単独業績の厳しさが目に付く▼好調が目立つ海外メーカーの中で、最近会った韓国メーカー幹部の表情が険しいのが気になった。理由を聞いてみると「利益率10%以上となっている今はいいが、今後はコストアップ要因が目白押しで頭が痛い」と言う。炭素税が今後、数千億円規模での負担が避けられない。産業界向けの電気代が今後上昇する。大企業と中小企業との賃金格差縮小方針を受け、外注費の大幅上昇が不可避と。アジア市場で競合する海外ミルの動向に目を配りながら、自身の競争力を鍛えることが重要だ。

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