がん患者を繋ぐアプリ――アフラック、ネスレなどと連携

アフラック生命保険はこのほど、がん患者などがん経験者の不安・ストレスの緩和を目的に、仲間を見つけ情報交換のできるアプリ「tomosnote(トモスノート)」を立ち上げた。同社は孤独になりやすいがん患者に「ひとりじゃない」と感じられる場所を提供し、治療中でもより充実した生活を送れるよう支援したい考え。11月からはアートネーチャーやサンスター、ネスレなども参画し、同アプリでがん経験者に必要な情報を提供していく。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

1981年以来、がんは日本人の死因第一位だ。がんの治癒率は上がっているものの、高齢化が進むにつれ、がんによる死亡者数は増え続けている。今年5月には、国立がん研究センターが15―39歳のAYA(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)世代のがんについて初めて調査結果を公表。若年層の推定患者数は年間2万1440人に上ることが分かった。

アフラック生命保険は4月、がん患者やがん経験者がより充実した生活を送るために必要な支援をがん経験者の視点で行う「がん経験者支援プラットフォーム」を立ち上げると発表した。2015年に社内でアイデアを募集し、さまざまな部署の社員が参加し同プラットフォームの実現に向けて動いてきた。

「保険だけではなく、アフラックとして新たに始めるべき事業があるはずだと考えた」と同社広報部の古谷亜紀子さんは説明する。背景には、がんに苦しむ人々を経済的困難から救うことを目指し1974年に日本で創業した同社が、創業50年となる2024年に向けて「生きるための保険」から「『生きる』を創る」にビジョンを刷新したことがある。同社はCSV経営を掲げ、新たな価値提供を通してがん経験者を取り巻く社会課題を解決していく方針。

2021年までに10万人の利用者を目指す

そして、同プラットフォームの取り組みの第一弾が9月21日に公開されたアプリ「tomosnote」だ。同アプリには「仲間を見つける」「記録する」「情報収集する」という3つの機能があり、がん患者やがん経験者が気軽に情報発信や意見交換できる仕組みになっている。

「がん経験者を取り巻く環境は年々変わっている。新たに『身体』『こころ』『お金』『仕事』といった不安や悩みなどの課題が認識されている。がん経験者同士が気持ちを共有することは精神的にも大事」と古谷さんは話す。

実際、同社が2014年に行った「がん経験者の心の変化に関する調査」によると、がんと診断された後に不安や動揺によるストレスといった心に変化のあった人は75%。その中で心の状態が好転した際に支えになった存在について、「同じ病気の患者」と挙げた人の数は家族、友人、医療従事者に次いで多かった。

「ひとりじゃない」と感じられる場所をーー。アフラックは今回の取り組みに合わせて公開したブランドムービーでそうメッセージを伝える。

アプリの機能は順次追加される。11月には、業務提携したアートネーチャーとサンスター、ネスレの3社が参画し、抗がん剤治療の副作用による脱毛、口腔粘膜の炎症、栄養摂取などの悩みに対する情報提供を始める。「アピアランス(外見)ケアは、CMに出ていただいた山下弘子さんから重要性を伺い、必ず入れたいと思っていた」と 古谷さんはいう。

アフラックは2021年までに10万人に利用されるサービスを目指し、すでに始まっているサービスを進化させ、さらに企業経営者や人事担当者に対してもがんと治療の両立支援を実現するための情報提供や運用支援を行っていきたい考えだ。

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