エム・テックの債権者説明会、創業者は出席せず 一部で怒号も

 10月1日に東京地裁に民事再生法の適用を申請した(株)エム・テック(TSR企業コード:310340748、埼玉県、向山照愛社長)の債権者説明会が、10月4日午後3時よりベルサール東京日本橋(東京都中央区)で開催された。
 会社側からは向山社長ほか経営陣、申請代理人の柳澤憲弁護士、栃木義宏弁護士(栃木・柳澤・樋口法律事務所)のほか、監督委員に選任された北秀昭弁護士(北秀昭法律事務所)が出席。また、スポンサーとして協力を仰ぐこととなった(株)冨士工(TSR企業コード:291043992、東京都)の楚山和夫社長も出席した。

債権者説明会で配布された資料(一部加工)

債権者説明会で配布された資料(一部加工)

 一方でエム・テックの創業者であり、民事再生の直前までオーナーだった松野浩史氏は株主交代を理由に出席しなかった。債権者は数百名が集まった。
 冒頭、向山社長がお詫びし、申請に至った経緯について説明した。その後、申請代理人より民事再生手続きや今後の再建計画についての説明があり、質疑応答に移った。質疑応答では、個別案件に質問が集中したほか弁済率の低さや欠席した松野氏の経営責任についての厳しい意見が続出し、一部で怒号も飛んだ。
 最後に、株主交代により現在の実質的な親会社で、スポンサーとなった冨士工の楚山社長が挨拶し、予定時刻を大幅に超えて午後5時25分に散会した。

民事再生に至った経緯(要旨)

 港則法違反による起訴(2018年3月)を受け、200以上の地方公共団体などから指名停止となり、受注の取り消しなどを受けた。また、2017年12月の(株)PROEARTH(TSR企業コード:363795677)の民事再生で、多額の焦付が発生。エム・テックがPROEARTHのスポンサー就任を表明したものの、その後の支援取り下げ、PROEARTHの破産への移行で、金融機関の融資姿勢が厳しくなった。
 2018年8月時点で資金繰りが逼迫し、自力での決済は不可能となった。8月末に冨士工に5億円の融資をお願いし、エム・テック株の過半数を譲渡担保として差し出し資金を調達した。それでも資金繰りは改善せず、9月10日に10億円の追加融資を受けて乗り切った。だが、9月末の決済は乗り切れない見込みとなり、ぎりぎりまで資金繰りに奔走していたが譲渡担保として差し出していた株が冨士工に移り民事再生を協議した。当初、冨士工には民事再生には同意いただけなかったが、最終的には株が移転した段階で同意してもらい、昨日、株主とスポンサーとして再建支援してもらうことで合意した。
 現在、各工事現場は止まっているが、スポンサー合意したことで工事継続ができると考えている。約300億円の手持ち工事を抱え、工事遂行することで少しでも多くの配当原資としたい。
 9月6日の定時株主総会で社長と副社長2名以外の取締役は辞任した。少人数の意思決定ができる執行体制とした。本来であれば、創業者の松野浩史・旧オーナーが出席しお詫びを申し上げるべきだが本日は欠席しており、その失礼をお詫びしたい。

再建計画の骨子・スケジュール

 冨士工の協力の下に現段階で検討している債務の弁済についての再建計画案の骨子は以下の通り。

1:担保債権の弁済
 所有する担保不動産等は任意処分し、担保債権者の金融機関等に対して売却代金を弁済する

2:再生債権の弁済
 10万円までの債権は少額債権として全額支払う。10万円を超える債権は97%をカットし、3%の相当額を再生計画認可決定後の1カ月以内に一括弁済する。

 11月5日 債権届出期限
 12月3日 債権認否書提出期限
 1月4日 再生計画案提出
 申立日から5カ月目 債権者集会での決議

 主な質疑応答は以下の通り。
Q.これまで実質的に経営を仕切っていたのは松野氏だ。説明責任があると思うが、なぜ欠席したのか?
A.出席するように求めたが、株主が代わったことを理由に出席は遠慮するとのことだった。9月30日までは実際の資金繰りは松野氏が行っていた。経営責任は今後の手続きのなかで調査していく。

Q.被害を受けた業者に対する説明、対応策など何も聞かされてない。
A.本日、埼玉県からは取引先倒産による緊急融資制度に認定されたとの連絡を受けた。こちらでやれることは今後も適宜、案内していく。

Q.冨士工によるスポンサーの方針、方向性を聞かせてほしい。
A.梶・冨士工会長から将来的には合併し、販管部門をスリム化する構想の話があった。

Q.一般債権160億円はどこにいったのか?財務状況の解析はできているのか
A.会計士による精査を受けているわけではないが、財務上で出てくる不審点は過年度に利益が出てなかったことに起因する。粉飾があったのではないかと推測している。

Q.子会社の(株)Earth(TSR企業コード:363805800、宮城県)、東北鉱産(株)(TSR企業コード:012645222、宮城県)はどうなっているのか?
A.2社は(エム・テックの)100%子会社だが、今後の見通しは立っていないのが実状。

冨士工・楚山社長挨拶(要旨)

 今回の説明会で初めて聞くようなこともあり、少々怒っている。これからそういうものを検討していきたい。ボランティアではないことはわかって頂けると思っているが債権者に少しでも還元をとは思っている。再建案が出て、皆様がそれを承諾する段階になれば、再建に向けて協力したい。それ以上のことは現段階では言えない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年10月9日号に掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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