観客動員数が減少傾向にある浦和レッズ その要因と改善策とは!?

Jリーグ、そしてアジアでも有数のビッグクラブの浦和レッズ。 そんな同クラブだが、約10年間でホームゲームにおける1試合の平均観客動員数は15000人近く減少している。1試合平均47000人以上動員した時代と現在は何が違うのか?観客数減少の原因と改善策を考察

アジア制覇2回のビッグクラブである浦和レッズ

「浦和レッズ」という名は日本人の多くの人が耳にしたことがあるだろう。三菱重工業サッカー部が前身の同クラブは1993年のJリーグ開幕時にオリジナル10の1つとしてJリーグへ参入を果たした。開幕から2、3年は最下位という結果に終わり、2000にはクラブ史上初のJ2の戦いとなるも、2位でJ1への復帰を決め、2006年にはポンテ、ワシントン、田中マルクス闘莉王を擁し、J1初優勝、さらに翌年はACL(アジアチャンピオンズリーグ)でも初優勝を飾った。2017年には2度目となるACL優勝を果たし、国内のクラブで唯一ACLを2度制覇した経験のあるクラブとなった。

なお、2006年のホーム開幕戦で初期のJリーグを含めJ1主催試合観客動員数が500万人を突破した。これはJリーグ加盟クラブ初の記録となった。

観客動員数は1位をキープも近年、減少が続く

直近10年でJリーグの観客動員数1位を保ち続けている浦和レッズ。近年は観客動員数が減少傾向にある。以下は1999年以降の同クラブのホームゲームにおける1試合あたりの平均観客動員数とリーグ戦の順位を表すデータである。

年度  リーグ戦順位  1試合あたりの観客数

2017 7 位      33,542 人

2016 2 位      37,109 人

2015 3 位      38,618 人

2014 2 位      35,516 人

2013 6 位      37,100 人

2012 3 位      36,634 人

2011 15 位     33,910 人

2010 10 位     39,941 人

2009 6 位      44,210 人

2008 7 位      47,609 人

2007 2 位      46,667 人

2006 1 位      45,573 人

2005 2 位      39,357 人

2004 2 位      36,415 人

2003 6 位      28,760 人

2002 11 位     26,372 人

2001 10 位     26,958 人

2000(J2) 2 位   16,923 人

1999 15 位     21,258 人

このデータから、J2だった2000年以外は1試合平均で2万人を超えていることが分かる。10年以上Jリーグの観客動員数1位を保っている。

しかし、そんなレッズだが近年は観客動員数が減少傾向にある。2006年から2009年まで4シーズン

連続で1試合平均4万人超えを記録していたが、2010年に3万人まで減少するとその後は1度も4万人を超えていない。

さらには、2015年から2016年で約1500人、2016年から2017年にはその2倍の3000人以上1試合あたりの平均観客動員数は減少している。2017シーズンからは休日の試合でも3万人割れの試合が出てくるようになった。2016年には3度あった5万人超えの試合も2017シーズンは1試合のみとなっている。これには、大宮アルディージャのJ2降格による、さいたまダービーの開催の有無なども関係していると考えられるがそのことを除いても明らかに観客数は減少しているだろう。

クラブの経営努力不足と象徴的な選手の不在が観客減少の要因

アジア有数のビッグクラブで、10年前までは1試合平均40000人を記録していた浦和レッズの観客はなぜ減少しているのか。それには、成績の安定感の無さやスターや象徴的な選手の不在、クラブの経営努力の不足、差別問題への対応や選手との距離感など問題は山積みである。その中で今回はスター生え抜き選手の不在とクラブの経営努力の不足をピックアップして触れていく。

平均観客動員数が4万人を超えていた時代の当時の同クラブには、長谷部誠や原口元気といった生え抜きや大きな存在感でリーダーシップのある田中マルクス闘莉王、ポンテやワシントンといった選手が揃っていた。しかし、現在のレッズには平川忠亮や阿部勇樹と選手は在籍しているが、ポンテやワシントンのような選手はいない。

クラブの生え抜きで現在、日本代表の主力選手である原口元気も2014シーズンの途中にドイツへ移籍している。生え抜き選手やスター選手の存在はファン・サポーターにとっては、試合を観戦するきっかけの1つであることは間違えないだろう。長谷部誠や原口元気といった選手がもし、レッズに復帰した場合はやはり、それらの選手が見たくてスタジアムに駆け付けるサポーターは一定数いるのではないだろうか。

そして、観客動員減少の最も大きな要因の1つと考えるのが、クラブの経営努力不足だ。プロスポーツは「興行」として行われるため、試合を見に来る観客がいて初めて成り立つ。その観客となりえる

ファン・サポーターを満足させることが何より重要である。

顧客満足度が5年以上連続でJリーグ1位の川崎フロンターレは年間700回以上も学校訪問を行い、ファンサービスやサイン会、トークショーにも力を入れている。その結果、等々力陸上競技場の改修効果もあり、観客動員数は増え続け、収容率(収容人数に対して座席が埋まっている割合を示す数値)は2016、17シーズンと2連続で1位を獲得した。

レッズと同じ埼玉県さいたま市をホームタウンとして活動する大宮アルディージャも各地でサッカー教室を開催やスクール生は自動的にクラブのジュニア会員となる制度を設けるなどしている。プロ野球の埼玉西武ライオンズでは、埼玉県内の小学校に球団の帽子を配布したり、本拠地のある所沢市周辺の市民に向けて格安でチケット販売するなど様々な工夫をしている。

レッズも近年はGO GO Reds(小中高校生は指定席が全席550円)とする活動を行ってはいるものの、日頃から小学校や商店街周りをするなどは、まだまだ川崎などのクラブに比べると足りないことは

間違えない。さらには、観客動員の多かった時代に比べて、浦和周辺に住む選手も減り、選手との距離感を感じるサポーターも少なくないという。名門クラブの観客減少には、このように多くの要因があることが分かる。常時4万人や4万5000人の観客動員数の時代にレッズに戻ることはできるのだろうか。

解決策は地道な努力やスタジアムに足を運ぶきっかけ作り

観客が多いクラブも少ないクラブも必ずそこに理由がある。今のレッズには、川崎のような日頃からの地道な努力の積み重ねが足りないことは間違えない。学校訪問やトークショー、サイン会の定期的な開催、ユニフォームなどのグッズ配布や小学生などの試合に招待するなど、ファン・サポーターを満足するために日々試行錯誤し、努力し続ける必要がある。

娯楽が多く、人口減少が続く日本で観客動員数を増やすのは容易ではない。さらに、近年はDAZNの影響でスマホやパソコンで気軽に試合を見ることができる環境にある。日頃からの地道な活動を行い、試行錯誤して努力していくことがスタジアムに足を運んでもらうことに繋がるのではないだろうか。

辻本拳也 Twitter

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