今月で発覚から半世紀となるカネミ油症事件に学ぶ集いが6日、福岡市内であり、被害者らは本格救済に至っていない現状へのいら立ちや支援の拡充などを訴えた。本県被害者は「50年翻弄(ほんろう)され、もみくちゃにされて生きてきた」と涙を浮かべ半生を振り返った。
会場では、原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)汚染の食用米ぬか油入り一升瓶が初めて展示。福岡県の被害者が長年取っておいたもので、被害者団体が「負の遺産」として当面保管するという。
同県被害者らでつくるカネミ油症事件50年企画実行委員会(安藤榮雄代表)が主催し、約60人が参加。奈留島で被害を受けた諫早市の認定患者、下田順子さん(57)は、当時島では情報が少なく家族の健康被害が油症と分かるまで時間がかかったこと、差別、次世代被害などについて述べた。
北九州市の男性被害者は、2012年に成立した救済法に基づく国、カネミ倉庫、被害者団体の定期的な3者協議に、PCBを製造したカネカが全く関わっていない点を指摘。「PCBをばらまいた責任は永久に消えない」と述べ、カネカを加えた4者協議の開催を求めた。
講演では下田守下関市立大名誉教授が、事件の複雑な経緯を解説。油症裁判を担当した吉野高幸弁護士は、救済法成立を一定評価した上で「ここまで来るのにあまりにも長すぎた」などと感想を語った。
油症2世でカネミ油症被害者福岡地区の会の三苫哲也事務局長(48)は、3者協議での国の消極姿勢を厳しく批判。「弱い者が泣き寝入りしない世の中をつくりたい」と述べ、集いを締めくくった。
翻弄の半生 振り返り涙 福岡で集い 汚染油一升瓶 初展示
- Published
- 2018/10/07 09:43 (JST)
- Updated
- 2021/01/10 15:23 (JST)
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