“一気通貫”で要望に対応 日本理工医学研究所 佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・2

 原点は、笑顔を見た喜びだった。
 終戦から5年ほどがすぎていた。阿比留忠徳氏は、腰痛を抱える叔母に電気治療器をプレゼントした。喜ぶ叔母の顔を見て、電気治療器の販売を始める。しかしメーカーが倒産。技術者を迎えて製造も始め、1957(昭和32)年11月に創業した。
 当初は農協を通じ農家などに直接販売した。ただ各社の製品は安全性にばらつきがあり、怪しげな売り方をする業者もいた。そこで日本健康治療機器工業会(現日本ホームヘルス機器協会)の設立(72年)に奔走。業界の信頼性の向上を図った。
 79年に転機を迎える。大手寝具メーカーと開発した、寝具に電位治療器を組み合わせた商品が人気に。これを機にOEM(相手先ブランドによる生産)にかじを切る。現在はOEMの売り上げが8割。取引先はフランスベッドや西川リビングが名を連ねる。

製品を組み立てる従業員=佐世保市新行江町、日本理工医学研究所

 工場内は組立、点検といった製造ラインと、設計開発部が並ぶ。回路や構造の設計者に加え、プログラマーやデザイナーもおり、商品の企画、開発から製造、販売まで“一気通貫のものづくり”が可能に。「取引先のさまざまな要望に応える態勢は整っている」。97年から父の跡を継ぎ代表取締役社長を務める阿比留宏氏(55)はこう表現する。
 このほか全国展開するエステ店向けの美容器も開発。動物病院と共同でペット用飲用水生成器を生み出した。佐世保市と友好都市を結ぶ中国厦門市の現地法人と提携し、日本向け一部商品の生産も始めている。
 社員の平均年齢は37・4歳と若い。昨年3月には月末金曜日の午後3時退社を奨励する「プレミアムフライデー」を県内で初めて導入。従業員の働く環境を整えている。
 創業から60年。健康に関する国民の関心は高くなった。薬機法(旧薬事法)は認証基準を満たした電位治療器について、頭痛や肩こり、慢性便秘、不眠症に効果があると認める。「美と健康を求める人々の願いをかなえたい」と阿比留社長。その先に、多くの「笑顔」が広がると信じている。

日本理工医学研究所のペット用飲用水生成器(右)とOEM製品

◎日本理工医学研究所
 佐世保市新行江町。阿比留忠徳氏が1957年11月に創業した。代表取締役社長は阿比留宏氏で2代目。本社のほか東京支店がある。従業員数は61人(4月現在)。主な取引先はMTG、丸八プロダクト、西川リビング、フランスベッド、中央ケネル事業協同組合連合会など。

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